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昇格は遠ざかるも 攻撃的に“日々成長”

「最後に『誇らしいチームだった』と言ってもらえるよう、残り試合も必死に闘っていきたい」。第27節・鹿児島ユナイテッドFC戦で大敗したのち、シュタルフ悠紀リヒャルト監督はそう決意を改めた。
 J2昇格を目指すAC長野パルセイロにとって、大一番と言える試合だった。残り8試合の状況で、勝ち点10差で追う2位・鹿児島とのシックスポイントゲーム。44分に先制を許すも、54分にMF藤森亮志のゴールで振り出しに戻す。その後は押し込む時間が続いたが、75分、84分と立て続けにFKから失点。90+2分には流れの中からトドメを刺され、1-4と敗れた。

 「同点弾を決めた後、我々にも逆転できそうな雰囲気やチャンスがあった。そこが分岐点になったと思う」と指揮官。スコアほどの実力差はなくとも、「ここぞ」というときにチャンスを仕留める鹿児島は上位に相応しく感じられた。
 長野は鹿児島戦までの9試合で、複数得点が1試合のみ。シュタルフ監督は「このチームはシュートの意識が足りない。それは私が来てからの課題だが、そろそろ払拭してほしい」と本音を漏らしていた。トレーニングから意図的にシュートシーンが増えるシチュエーションを作り、“意識改革”を敢行。それが実ったのが、第28節・愛媛FC戦と第29節・SC相模原戦だった。
 まずは愛媛戦。前半はシュート数が3本にとどまり、27分に先制を許す苦しい展開だった。そして後半、開始早々の46分にMF三田尚希が今季初得点を沈めると、51分にもMF佐藤祐太が逆転弾。トレーニングで強調された意識を体現するかのように、後半だけで11本ものシュートを放つ。しかしこのまま逃げ切るかと思われた終盤、またもセットプレーから失点し、2-2と引き分けた。


 続く相模原戦。2分にFW山本大貴のゴールで幸先よく先制して直後にミスから追いつかれたが、41分にCKからDF乾大知が勝ち越し弾。極め付けは47分だった。カウンターから左サイドでDF杉井颯が抜け出すと、クロスに対してペナルティエリアに5人が走り込む。最後はMF山中麗央がネットを揺らし、そのまま3-1と快勝した。今季最多となる18本ものシュートに加え、圧倒的な攻撃の厚みを披露。失点が続いたセットプレーの守備も選手の配置を変えてゼロに抑え、逆に攻撃で得点を奪ってみせた。


 第29節終了時点で昇格こそ絶望的となったが、チームコンセプトである「Grow Everyday」は体現できている。あとは指揮官の言葉通りに「誇らしいチームだった」と胸を張れるよう、ラストスパートをかけるのみだ。

取材/田中紘夢