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新スタイル体現を 開幕へ準備着々

J3で2年目のシーズンを迎えた松本山雅FCが、開幕に向けて着々と準備を進めている。霜田正浩監督を迎えて始動し、長丁場のキャンプを通じて新スタイルを浸透。キーワードは「賢守即攻」で、攻守とも強気でアグレッシブなサッカーを実現させながら勝利をつかみ取っていく。

 攻防一体。「ボールを中心とした攻撃と守備」という基本的なコンセプトに沿って、相手よりも得点を多く取って勝つスタイルが設計されている。従来のように相手の背後にボールを流し込むこともあるし、自分たちで細かくパスを繋ぎながら崩すことも。ピッチに立つ11人が、概念を共有しながら自在に攻撃を繰り出す。
 この攻撃が、従来の松本山雅にはあまり見られなかった流麗さがある。スイッチとなる縦パスが入ると、そこから狭いエリアでワンタッチを多用しながら突破。展開した左右サイドからクロスを上げて、シュートで仕上げる。キャンプ中のトレーニングマッチでも、それが何度か再現されていた。


 もちろん決まったパターンではなく、相手の配置やスタイル、得点、時間帯などによって適切な選択は変わる。それを選手が俯瞰図で共有し、その瞬間に合ったプレーをチョイス。掲げる理想は高く、一朝一夕には体現できないかもしれない。ただ、粘り強くトライしてその領域にたどり着くことができれば、新たな地平が広がるだろう。


 守備はまず、ロスト直後の即時奪回が第一。近い距離感でパスを回すため、失っても複数人で一気に囲みやすい利点もある。奪い切れれば再び攻撃のフェーズ。プレスをかわされて逆サイドに展開されたら、スライドして対応する。ボールを中心に考えるから、最終ラインも大胆に高く上げる。大きく空いた背後は、GKも含めてケアしていく。
 もちろんゴール前に張り付けられる局面もある。全員が戻って、しっかりと跳ね返す。身体を張る。こうしたギリギリの水際では、従来の山雅がそうしてきたように気持ちの強さを表現しながら守る。失点は織り込み済みで「攻め勝つ」設計ではあるが、失点が少ないに越したことはない。

 明確に戦術設計されたスタイルを理解し、体得し、表現できる選手がピッチに立つ。キャンプでは連日のトレーニングとトレーニングマッチで戦術の落とし込みと習熟度のチェックなどが進んでおり、チーム内でポジションを争っていく。シーズン開幕は3月5日のアウェイ奈良クラブ戦で、ホーム開幕は3月26日の第4節・テゲバジャーロ宮崎戦。

取材・撮影/大枝令