高校スポーツ

愛工大名電で甲子園のマウンドへ 「寺嶋 大希」

 安曇野の地から、ひのき舞台に立った。夏の第103回全国高校野球選手権大会1回戦。愛工大名電(愛知)の右腕・寺嶋大希が三回途中から救援のマウンドに立ち、91球を投げ抜いた。敗れはしたものの、憧れの甲子園で奮戦。「他の球場とは違う雰囲気だったけど、普段通りに気持ちよく投げられた」と振り返った。

 安曇野市穂高出身。安曇野穂高リトルを経て、穂高東中時代は安曇野穂高リトルシニア(当時)でプレーした。「レベルの高い県外に出て強い高校に進みたい」との思いを募らせ、施設と指導陣の充実ぶりに惹かれて愛工大名電への進学を決意。日米のリーグで通算4367安打という前人未到の金字塔を打ち立てたイチローを筆頭に、工藤公康、山﨑武司など投打の名選手を輩出した強豪校だ。
 寺嶋はその環境でも1年時から公式戦の出場機会をつかんでいた。その中でも転機となったのは昨冬。「最後の年なので、それまでより高い意識で取り組んだ」とウエイトトレーニングの負荷を高めると、2年秋の段階で72キロほどだった体重が79キロまでアップ。春を迎えて体のたくましさを増した。
 持ち味の制球力に加え、直球は最速148キロ。しなやかなフォームのスリークオーターから繰り出す変化球も多彩で、チームメイトの左腕・田村俊介とともにプロ注目の選手としてピックアップされるようになった。最後の夏は左右の二枚看板で愛知県大会を勝ち抜き、3年ぶり13度目となる夏の甲子園切符をつかんだ。
 初戦の東北学院(宮城)戦は、田村が先発。しかし0-0の三回1死一、二塁の段階でリリーフ登板を告げられた。その回に3点のビハインドを背負うと、迎えた五回。2死無走者から長短3連打を浴びて2点を失った。「うまく打たれてしまった。悔しい気持ちが強い」。外角低めのスライダーを打たれて出塁を許し、高めに浮いたフォークを痛打された。
 打っては七回2死無走者から二塁打を放ち、続く打者の二塁打で生還。これで2-5と反撃の狼煙をあげた。チームは続く八回にも1点を返したが、反撃もここまで。最後の夏は終わった。
 だが、寺嶋の野球人生はこれからも続く。「高卒からプロ入り」を目指し、プロ志望届を提出。10月11日のドラフト会議で、その名が呼ばれる時を待つ。理想とする選手はダルビッシュ有(パドレス)。「変化球ピッチャーでも速くて、コントロールもいい。自分もそうなりたい」と思いを募らせ、次なる舞台での活躍に備えている。


<取材/大枝令>
<写真提供/保護者>