地域スポーツ

山雅OBが指導         ボールゲームで子どもの成長促す

 学生と教員、そして元選手の思いが結集し、新たな地域スポーツの苗が芽生えている。松本山雅スポーツクラブが2019年から運営する「ボールゲーム教室」だ。年中・年長と小学1〜2年生のコースに分かれ、松本短期大学体育館で月に3回開催している。

 講師を務めるのは、金子美咲さんと2007〜2012年まで山雅でプレーした今井昌太さん。現在はNPO法人松本山雅スポーツクラブのスポーツクラブ事業担当として地域の健康促進に寄与している。その今井さんが同じ木曽郡出身で松本短期大学・幼児保育学科の白金俊二准教授とタッグを組み、開講に至った。白金准教授は「競技に特化したものではなくて、幅広い動きを教えたいという思いが合致した」と経緯を話す。

 同教室はドイツ発祥の指導プログラム「バルシューレ」を導入している。児童期の発達的特徴に合わせた運動教育で、「子どもたちは遊びの中から成長する。まずは楽しくやって、まだやりたいというくらいで終わり、気づいた時には運動能力が上がっている」と今井さん。特定の競技に偏らず応用可能な動きを取り入れ、子どもたちの可能性を広げていく。
また、白金准教授が担当するゼミの学生もサポートとして参加している。昨年12月17日に行われた教室では、研究の一環として考案したメニューを披露。竹村篤美さん(2年)は「声かけ一つでも全然違ってくる。将来保育士になった時に、子どもたちと楽しく運動遊びができれば」と思いを馳せた。

 子どもたちは小学生になると地域のスポーツクラブに入り、一つの競技に没頭するケースは往々にして考えられる。それに対してボールゲーム教室は、競技の“一歩手前”を楽しむ場。白金准教授は「この教室は何かで1位を目指すのではなくて、いろいろなことが学べる。そういう方向を求める人がいるからこそ、人数が増えてきている」と力を込める。
 小学4年〜中学生には、「マルチスポーツ教室」が設けられている。信州ブレイブウォリアーズや、ボアルース長野など国内トップリーグに所属する各競技団体から講師が集い、さまざまな競技に触れられる。より本格化した教室と言えるが、いずれも共通しているのは、スポーツへの入り口であることだ。

 「なんでもいいのでスポーツに携わってほしいし、それで健康に育ってくれるのが一番。もしサッカーでうまくいかなかったとしても、他の競技でプロになれるかもしれない。誰かをサポートする側であってもいい」と今井さん。今後も教室に関わるそれぞれの思いを胸に、子どもたちの可能性を広げていく。

取材・撮影/田中紘夢