実践から楽しさ学ぶ 心身ともに育む相撲

塩尻市のちゃんこ鍋屋「相撲茶屋 笠の花」。店内併設の土俵で、子どもたちが稽古に汗を流す。中南信地域の小中学生が通う信州塩尻相撲クラブ。自身も1期生だった小林雄矢監督は「大きい相手に勝つのも相撲の醍醐味。ガチガチに全国優勝を目指すとかではなく、まずは相撲を好きになってもらいたい」と話し、日々子どもたちの指導に熱を入れている。

 御嶽海の活躍により、昨今の県内は相撲熱がますます高まっているという。とはいえ、大相撲に憧れて参加する子どもは少数派だ。「学校で相撲大会のチラシが配られて、それに出て『楽しい』と思ったのがきっかけです」と話すのは、中村圭佑くん。小学1年生で相撲をはじめ、6年生になった今では主将を務める。「寒い、痛い、苦しいというイメージがあるかも知れないけど、勝ったときの高揚感が強い。勝ち負けがはっきりつくので、勝ったら『もっと勝ちたい』と思うし、負けたら『次は勝ちたい』って思う」と、相撲の魅力を力説してくれた。
 諏訪市から稽古に通っている秋山慶太郎くんも、わんぱく相撲大会で優勝したのをきっかけに2年前から参加。見守る母親は「元気な子にとってはすごくいい。どこまでやったら相手が痛いのか…という加減が分かるようになるし、一瞬の緊張感がすごいから気持ちも強くなる」と微笑んだ。わずか1秒以内に勝敗が決することもある、刹那の勝負。「その短さでどれだけ自分の力を発揮できるか。それも相撲の面白いところです」と指揮官は目を細める。

 門戸を広く、まずは楽しさを知ってもらう。小林監督は「四股やすり足、腰割り。一番大事な基本をまずはしっかりと意識させることを大事にしている」という。基礎を大切に教えつつ、相撲の楽しさに気付いてもらえる指導を意識。そんな思いが伝わるのか、長く続ける子がほとんどだという。


 在籍する19人は学年も体格もさまざまだ。「ここに来る子はみんなうまくなる。小学生で活躍できなくても、中学生になれば勝てるようになる」と、4月から中学生になる中村くんは笑顔をみせる。その言葉通り、昨年度はクラブの教え子が全国中学大会(全中)に出場。小学生たちも負けじと、長野県小学生相撲選手権での団体優勝を目指す。クラブはかつて3連覇の偉業を成し遂げた経歴も。楽しく相撲に打ち込んだ先に、たどり着きたい高みが見えてくる。
 


【小林雄矢監督】
このクラブから大相撲で活躍できるような力士を生み出せたら、とても嬉しいことだと思います。夢は自分の土俵を持って、クラブをさらに発展させていくことです。


【中村圭佑主将(6年・吉田小)】
昨年のわんぱく相撲全国大会では3戦連続で下手投げを決めてベスト8に進出しました!今年は中学生になるので、県大会優勝を狙えるように頑張っていきたいです。
 

取材・撮影/佐藤春香