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堤内地に芝生のグラウンドを パルセイロが抱く願い

 度重なる災害が、多くのアスリートを苦しめている。長野市の河川敷内にある千曲川リバーフロントスポーツガーデン(以下リバーフロント)は、サッカーやラグビー、アメリカンフットボールなどの競技場だ。2019年には台風19号の影響で、グラウンドが全面的に冠水。今年8月にも記録的豪雨によって、大きな被害が及んだ。

 同グラウンドを拠点とするAC長野パルセイロは、活動に多大な障壁が生じている。リバーフロントの冠水時は、市内外の練習場を転々とする日々。トップチーム、レディース、アカデミーと多くのカテゴリーが苦しんだ。

 障壁は冠水だけではない。河川敷のグラウンドには、夜間照明や防球ネットを設置するのが困難だ。現在は高所作業車を用いて照明を設置しているが、台数も限られてくる。ユース出身でトップチーム所属の小西陽向は「ユース時代は薄暗さを感じながら練習していた。天然芝で良い環境ではあるが、もっと良くなればうれしい」と思いを巡らす。

 こうした事情を背景に9月、関係者がタッグを組んで堤内地への芝生のグラウンド整備へ立ち上がった。株式会社長野パルセイロ・アスレチッククラブ、長野市サッカー協会、NPO法人長野市ラグビーフットボール協会、長野アメリカンフットボール協会の4団体が共同で署名活動を開始。期間は9月22日から12月18日までの約3カ月に及ぶ。

 「多くのチームが利用でき、子どもたちの夢にも繋がるような環境をつくりたい」。そう語るのは、AC長野パルセイロ・ビジネス本部の小池光利氏だ。クラブの前身にあたる長野エルザのOBで、ボランティアスタッフを経て今年から入社。長野市サッカー協会の事業担当理事も務めている。

 県内の3種(中学)や4種(小学)にも携わる身として「今年はコロナ禍で、多くの子どもたちの試合が延期となった。延期ならまだよかったが、8月の豪雨でグラウンドが使えなくなり、中止も余儀なくされた。安全に楽しめるグラウンドさえあれば…」と嘆く。

AC長野パルセイロ・ビジネス本部 小池光利氏

 AC長野のトップチームには現在、県出身選手が4人いる。彼らが盛んに口にするのは、「地元を盛り上げたい」という熱意だ。堤内地に新たな環境が整えば、将来的により多くの県出身選手が生まれ、信州サッカーはさらなる熱を帯びるかもしれない。それはサッカー以外の競技も同じだ。信州スポーツの“加速装置”となるような環境が整えば、この上ない。

取材・撮影/田中紘夢