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勝負どころで脆さ露呈 1年でのJ2復帰ならず

松本山雅FCの2022シーズンは、不本意な結果で終幕を迎えた。クラブ初となるJ3を戦い、20勝6分8敗(勝ち点66)で4位。自動昇格の2位まで勝ち点わずか1及ばなかった。実質的に昇格が消滅した第33節テゲバジャーロ宮崎戦の試合後会見で、名波浩監督は「勝負どころで勝てなかった。力ずくでも勝ちに持ってこられたゲームが何回かあったと思うし、それを逃してしまった責任は全て自分にある」と振り返った。

 その言葉通り、勝負どころの一戦にどこまでも弱かった。特にシーズン最終盤。瀬戸際の戦いを強いられるシチュエーションで腰砕けのゲームを演じてしまい、逆転昇格を自らの手で手放した。
 例えば第32節、カターレ富山戦。隣県のアウェイに山雅サポーター2,200人が詰めかけ、ホームのような雰囲気を作り出した一戦だ。しかし序盤から失点を重ね、0-4の大量ビハインドを背負う。そこから3点を返す猛反撃を見せたものの、勝ち点0に変わりはない。菊井悠介、佐藤和弘の2人が出場停止だったとはいえ、痛すぎる黒星だった。
 続く第33節宮崎戦も、同様に4失点。守備が機能せず、警戒していた相手選手にみすみす2ゴールを許すなど崩壊した。ディフェンスを基軸に勝ち点を積み上げてきたはずのチームが、終盤戦の2試合で8失点。3バック中央に定着していた大野佑哉は「今までやってきたことに自信を持ってチャレンジはしたけど、その結果まだまだだったということだと思う」と言葉を絞り出した。
 残り1試合の時点で2位・藤枝MYFCとは勝ち点差3、得失点差17の4位に大きく後退。現実的に、J2復帰は叶わなかった。

 振り返ればそれ以前にも、「勝てば首位に立てる」というシチュエーションの試合でことごとくチャンスを逃して自らの首を締めた。シビアな状況に置かれた場数が少ない若さゆえなのか、日頃の取り組みに見直すべき要素があったのか――。いずれにせよ、とことん「勝負弱い」まま終幕を迎えた。
 せめてもの救いは、ラストゲームで魂が吹き込まれたことだろうか。地元出身の40歳・田中隼磨が今シーズン限りでの引退を表明。SC相模原を迎えた最終節で、0-0の87分からピッチに立った。
 待ちかねた「松本の誇り」の登場に、スタジアムの雰囲気が一変。右ひざはすでにボールを蹴れないほど傷んでいた。それでも90分、山田真夏斗からのパスを受けて左足でクロス。これが起点となり、決勝点が生まれた。

 「(出場する)時間は問題じゃない。生きざまを示したい」と話していた通り、最後に田中隼磨たるゆえんを証明してみせた。この鮮烈な3分間+アディショナルタイムの記憶を受け継ぎ、再びJ2復帰へと歩みを進めていく山雅。その戦いはすでに潮目を迎えている。

取材/大枝令