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信州ダービー2連敗 大きな試練に直面

急転直下の苦境に叩き落とされた。松本山雅FCは開幕6試合負けなしから一転、リーグ戦第10節までの4試合は1勝3敗と黒星がかさんだ。しかも、天皇杯県予選を兼ねた長野県選手権大会決勝と第10節は、AC長野パルセイロとの「信州ダービー」。ピッチ内外で火花が散るこのビッグマッチで2回も敗れ、大きなダメージを負った。

 まずは「第1幕」となる県選手権決勝。大型連休に伴う3連戦の3戦目だったが、リーグ戦でも起用している主力メンバーを中心に起用した。先制点を許した直後、CKから野々村鷹人がプロ初ゴールとなるヘディングを決めて同点とした。その後も優位に試合を進めたが、決め手を欠いたまま延長戦も終了。勝負の行方はPK戦に委ねられた。

 長野が5人とも成功したのに対し、山雅は2人目の高卒ルーキーの田中想来が相手GKに止められて4-5。信州ダービーの公式戦では実に15年ぶりとなる黒星を喫し、サンプロアルウィンでオレンジ色の歓喜を苦々しく見守るしかなかった。
 「いままでいろいろな悔しい思いをしてきたが、間違いなくきょうが人生の中で一番悔しいし、責任を大きく感じている。この経験を次に繋げないといけない」。田中はそう話し、雪辱を期した。リーグ戦のダービーは1週間後。チームは前回の反省を踏まえ、長野Uスタジアムに乗り込んだ。

 だが、オレンジ色に染まった敵地で繰り広げられた試合は、さらに想像を絶するほどの内容だった。ロングボールのこぼれ球を拾われ、素早い攻撃を許す。ボールを前に運べず、ミスも含めてロストが頻発。そこから鋭いショートカウンターを受ける。放ったシュートは今季最少の4本。スコアこそ1-2だが、前半のうちに試合が壊れていても不思議ではなかった。

 戦術的に極めて重要なポジションの主力2人が欠場していたし、その週の公開トレーニングで不在だったり別メニューだったりした選手が先発に名を連ねた。今季これまででもっとも苦しい台所事情ではあったのは確かだ。それでも勝たなければいけないビッグマッチ。それなのに雪辱はおろか、スタイルを表現できないまま、最大級の屈辱を上塗りする敗戦となった。

 「自分たちが精神的に未熟だった。相手が勢いを持ってやってきて、もちろん僕たちも強い気持ちで臨んだけれど、自分たちが勇気を出せなかった。幼稚な試合をしてしまった」。試合後、主将の安東輝は沈痛な面持ちで言葉を絞り出した。
 新たなスタイルを体得しながら勝ち点を積み上げていく途中で、歴史的な敗戦を2回も喫した山雅。だがこの大きな屈辱を忘れず、試練を乗り越えなければ、J3優勝という目標は果たせない。ここが踏ん張りどころだ。

取材/大枝令