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佐久長聖 意地の県王座奪還 4年ぶり優勝

第104回全国高校野球選手権長野大会は7月30日、長野市の長野オリンピックスタジアムで決勝を行い、佐久長聖が4年ぶり9回目の優勝を飾った。ノーシードからの戦いを強いられた佐久長聖だったが、強豪の意地を見せて勝ち上がった決勝の舞台。好投手擁する都市大塩尻を打ち負かし、夏の甲子園切符を手にした。

 初回に先制を許した佐久長聖だったが、直後の二回に敵失で同点。四回は短長3連打で2点を勝ち越した。5回は1死満塁から連続スクイズで2点を追加、六回は代わったばかりの都市大塩尻のエース・今野を攻め、中軸の連続長打でさらに2点を加えて突き放した。投げては先発の廣田が好投し、被安打6の1失点で完投した。
 大一番の戦いで、佐久長聖の強さを示したのが打線のつながり。得点をたたき出した中盤の四回、五回、六回は顕著に表れた。
 四回は1死から張田がしぶとく左前打で出塁、続く廣田も粘って中前打でつないだ。下位打線でつくった好機に1番の藤澤は「絶対に返す」と奮起した。初球のストレートを鋭く捉えて中越え三塁打を放ち、三塁上で豪快にガッツポーズ。鮮やかな勝ち越し劇だった。
 五回は2四球と単打などで1死満塁とし、連続スクイズで加点。六回は1死2塁から3番の岡田が右越え三塁打、続く寺尾も左越え二塁打と中軸が長打でつながった。小技、大技と硬軟織り交ぜ、下位でも上位でもそれぞれが役割を発揮。個の力ではなく、打線として機能した。

 苦しんでつかんだ夏の県王座だった。春は地区大会の1回戦で敗退。選手たちは危機感を持って現実に直面した。県内最大の部員数を誇り、実力の高い選手もそろう。スタメン、ベンチ入りメンバーを勝ち取ることも至難で、それだけに「我を優先するプレー」が出やすい。主将の寺尾は「俺が俺がという選手が多かった」と振り返る。
 しかし、春の敗戦が選手個々の認識を変えた。チームプレーに徹する姿勢が芽生え、そして根付いた。その成果が決勝で示した打線のつながりだ。寺尾は「強さは全員のチーム力」と胸を張った。

 2年前は夏の新型コロナウイルス禍で甲子園が中止。球児の夢が失われた中、代替大会として開催された県大会で優勝したのが佐久長聖だった。その姿を1年生として目に焼き付けたのが今年の3年生。さまざまな思いを胸につかんだ甲子園切符に、藤原監督は「OBたちの思いが脈々と受け継がれているんだなあ」と実感を込めた。

PROFILE 佐久長聖高校

1964年に佐久高校として開校し、95年に現行名に改称した。所在地は佐久市岩村田。生徒数(5月1日現在)は1016人(男子550人、女子466人)。野球や駅伝など運動部が盛んで、東京五輪マラソン6位入賞の大迫傑、プロ野球・ヤクルトの元山飛優ら第一線で活躍する選手を多数輩出している。