2月は一年の中でも特に寒さが厳しい季節です。外に出ると、寒さで体がこわばり手足の冷えを強く感じます。しかし、凍える寒さにもかかわらず、私たちの体温は外気温が大きく変化してもほぼ一定に保たれています。これは人間が「恒温動物」であり、体温を自ら調節する仕組みが常に機能しているからです。
寒い、暑いといった環境の変化を最初に感知するのは、皮膚にある感覚受容器です。皮膚には温度の変化に反応するセンサーが分布しており、冷たさや温かさの違いを捉えます。その情報は神経を通じて脳へ伝えられ、体温調節の中枢である視床下部(ししょうかぶ)に送られます。視床下部は、体温だけでなく、食欲、のどの渇き、睡眠、ホルモンの分泌など、生命維持に欠かせない多くの働きを管理し、自律神経の働きを調節しています。体温は37℃でほぼ一定に保たれ、外の環境の変化に応じて皮膚の血管を収縮させたり拡張させたり、筋肉を使って熱を生み出したり、発汗の量を調節したりすることで体温を一定に保っているのです。
寒い環境では、皮膚の近くを走る血管が収縮し、皮膚への血流が減少します。すると、体の内部で生じた熱が皮膚まで運ばれにくくなり、体の表面から失われる熱の量が少なくなります。その結果、脳や内臓など重要な臓器の温度が優先的に保たれます。寒さで手足が冷たくなり、白く見えるのは、皮膚への血流を抑えて体の中心を守ろうとする反応が起きているためです。また、皮膚の毛が立つことで皮膚表面に空気の層ができ、体温の低下を防ぐ助けにもなります。いわゆる「サブいぼ」は、立毛筋が収縮することで生じる反応です。
一方、からだは筋肉を動かすことで多くの熱を生むことができます。ウォームアップやストレッチによって筋肉や軟部組織の血流が増加し、筋温が上昇して、スムーズに身体活動を行える条件が整ってきます。身体が温まることで、筋や関節は滑らかに動きやすくなりますが、十分に温まらない状態では筋膜や腱の柔軟性や滑走性が低下し、違和感や痛みが生じやすくなります。ウォームアップが不十分な状態で運動を行うと、身体に痛みや違和感が生じやすくなり、この時期には、運動しただけで膝や足首の痛みを訴える選手も少なくありません。
また、視床下部を中心とした体温調節の仕組みにも限界があります。寒さが強く、長時間体が冷やされると、視床下部の調節が追いつかなくなり低体温症を引き起こすことがあります。また、血流が極端に低下した指先や耳では、凍傷が起こり、皮膚や組織が傷ついてしまうこともあるのです。逆に、気温や湿度が高い環境で激しい運動を行うと、体の中で多くの熱がつくられます。視床下部は体温を下げようとして、皮膚の血管を広げ、汗を出すことで熱を外へ逃がそうとしますが、空気中の湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体の熱が十分に逃げなくなります。この状態が続くと、視床下部による体温調節が次第に機能しなくなり体温が異常に上昇してしまいます。さらに、発汗が続いて体内の水分が失われると脱水が進み、体温を適切に保つことが難しくなります。これが熱中症です。
寒い季節のスポーツでは、「寒さを我慢する」ことよりも、体温調節機構を理解し、ウォームアップや服装を工夫することが大切です。ウィンタースポーツが盛んになると同時に、オフトレーニングで身体をさらに鍛える時期でもあります。寒さに対する体の反応を理解して、体の仕組みを知ることはパフォーマンス向上だけでなく、ケガや体調不良を防ぐ第一歩でもあるのです。

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▶PROFILE 百瀬 能成
一般社団法人MOSC 百瀬整形外科スポーツクリニックの院長。
スポーツの世界に「Player’s first(プレイヤーズ・ファースト)」という言葉があるように、患者様を第一に考える「Patients’s first(ペイシェント・ファースト)」を理念として、スポーツ傷害や整形外科疾患の治療にあたる。
松本山雅FCチームドクター。医学博士
