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“コロナショック”に負けず チーム力を誇示

恐れていた事態が起きようとも、動じることはなかった。J3リーグのAC長野パルセイロは、第20節カターレ富山戦を前に選手4人が新型コロナ陽性と判定。さらに2人が濃厚接触者となり、戦力ダウンを余儀なくされた。
 チームは第17節ガイナーレ鳥取戦から3連勝と好調を維持していた。第13節ヴァンラーレ八戸戦から4-2-3-1のシステムが定着し、誰が入っても遜色ない戦いぶり。守備の要・喜岡佳太の移籍もあったが、シュタルフ悠紀リヒャルト監督は「一人欠けて崩れるようなチームづくりをしてきた覚えはない」と強気だった。それはコロナショックを受けても変わらず、富山戦を前に「陽性者が出たときのための準備はしてきた。良いゲームができると思う」と自信をのぞかせていた。
 試合は前節からスタメンが3人入れ替わった。システムは3-6-1で、初先発の藤森亮志が右ウイングバックに入った。「サイドバックは戦術的に求めていることが多い。5枚(3枚)にすることによって、そこに入る選手がもう少し簡単な役割でプレーできるという利点もあった」と指揮官。守備時は後方に人数を割き、攻撃時は4-4-2に可変してサイドに厚みを持たせた。

 スコアが動いたのは22分。三田尚希が高い位置でボールを奪うと、こぼれ球を拾った山本大貴がドリブルから左足で仕留めた。得点はショートカウンターからだったが、主にチャンスを演じたのはサイド。攻撃時に左サイドバックとなる杉井颯が果敢にオーバーラップし、クロスで脅威を与え続けた。一方の右サイドバック(右ウイングバック)を務める藤森は2列目を本職としているが、不慣れなポジションで自身2度目のフル出場。見せ場こそ少なかったものの、攻守のバランスを保ってウノゼロでの4連勝に貢献した。

 「立ち位置や関係性、プレーの判断を助ける原則があるので、どこのポジションに入ってもそこまで迷いはないと思う」とシュタルフ監督。この試合に限らず、選手たちはキャンプから落とし込まれた“24の原則”をもとに、ポジションが変わろうとも動揺を見せていない。非常事態下でもチーム力を誇示した上、終盤には牧野寛太が今季初出場を果たすなど、競争力が高まるきっかけにもなった。

 「毎試合選ばれた18人が、しっかりと勝点を積み上げていくこと。それが最終的に結果に表れてくるはず」。シュタルフ長野のチーム力は、日に日に高まるばかりだ。

取材/田中紘夢