地域スポーツ

【WingまつもとR.G.】早春に咲き誇る演技 忍耐の3年間を乗り超えて

「スポーツを当たり前にできる日々」に感謝を込めて――。長い冬を耐え、咲き誇る花々の演技が、きらびやかにアリーナを彩った。新体操の第42回WingまつもとR.G.演技発表会が2月23日、松本市総合体育館で開かれ、総勢277人が演目を披露した。

 コロナ禍が始まった2020年の演奏発表会は開催2日前に中止を余儀なくされた。「スポーツは『いつでもできる』と、ずっと思っていた。安心・安全がないとできないんだ…ということに改めて気付かされた」。クラブの代表を務める西沢啓子さんは、苦渋の3年間を噛み締める。感染拡大を受けて体育館は閉鎖。練習どころか集まることすらままならない日々の中、方法を模索し続けた。
徐々に動き出した2021年は、保護者の協力を得ながらZoomでのリモート練習を行い、生徒たちの家族にだけでも披露しようと工夫して小規模の発表会を実施。マスクを着けたままの練習は息が詰まる。しかし対策の甲斐があってか、クラブ内部からクラスターが発生することはなかった。


「ちょっとでも練習できて『良かった』。ちょっとでも発表できたことに『感謝』。明日はまたできなくなるかもしれない、でも何か方法はあるはず。一日一日を大切にすることを再認識した」と西沢代表。穏やかな眼差しで生徒たちを見つめる。

 「幼児から高校生、Wing総勢277名がそろって同じ演技ができること。今、この瞬間がとても幸せで、平和であり、この幸せが続いていくことを心から願っています」――。アナウンスに続く最終演目「KEY FOR LIFE」は、コロナ禍中の卒業生である高野里香さんが創作。きらきらと舞う笑顔の「花々」が、色とりどりにアリーナを埋め尽くした。圧巻の光景で会場を包み、惜しみない拍手を受けた。

 「長く続けてきた中で、卒業した子たちが戻ってきて支えてくれる。そこがクラブの自慢」と、西沢代表は微笑む。高校生の頃に新体操と出合って感銘を受け、「こんなに素敵なスポーツを広めたい」と、クラブの前身となる社会体育教室を立ち上げた。40年以上の歴史を重ねながら、数多の卒業生が全国に羽ばたいている。発足時に3歳で加入したメンバーは今、ベテランとして生徒たちへ指導の輪を繋ぐ。「当たり前の日々」に感謝しながら新たなつぼみを綻ばせ、また次の春へと歴史は続く。


【西沢啓子代表】
困難があっても、そのハードルを越えていくのがスポーツ。あきらめないで皆が力を合わせれば、次の答えが見つかります。当たり前のことが幸せだと、改めて確認する日々でした。

取材・撮影/佐藤春香