高校スポーツ

【長野西高等学校 バトン班】プレッシャーを笑顔で乗り越え 全国制覇の道を突き進む

昨年夏、長野西高校バトン班の全国11連覇に関する記事がメディアで躍った。この3年前、同様の全国制覇の新聞記事に「かっこいい」と、心を揺さぶられたのが、当時中学2年生だった村上ひまり班長だ。猛勉強の末に入学、バトン班に入った。同じようにバトン班に憧れて西高に来た生徒は多い。

 全国11連覇を果たしたのは「全国高等学校ダンスドリル選手権大会」のミリタリー部門。きれいな隊列を組み、シャープできびきびとした動きを競う。メジャーレットなども行うが、伝統的に最も力を入れている種目だ。「ミリタリーは、全員の動きをそろえたうえで、スピードを加える。速くきれいにそろえなければなりません」と話すのは、顧問の中塚美奈子先生。平日は授業の後1、2時間、休日は3時間練習、進学校だけに学習時間を確保しながらやり繰りしている。昨年は3年生が一人、しかもコロナ下で入学したため、3年間満足な練習ができなかった。「そんな状況の中、生徒一人一人が家で練習をしていました。3年生は一人でしたが見事に班を引っ張ってくれ、2年生もよく盛り上げてくれました」。大会では、映画「アベンジャーズ」の登場人物ソーをイメージした演技で躍動。「今までで一番力を発揮できた素晴らしい演技だった」と、中塚先生は目を細める。

 村上班長は「明るくて、面白い子たちの集まり」と、笑顔で班を評する。自らは班長として「平等に接し、自分が一番練習に積極的に取り組む」ことを心掛ける。全国大会連覇中の重圧は班員全員が感じているが、不安がなくなるまで練習を積み「自信」へと変えていく。さらに練習前には、「絶対できる」「感謝を伝える」「私たちは無敵」と声を合わせて士気を鼓舞する。練習メニューは班員たちが考え、修正点などを指摘し合いながら完成度を上げていく。「自分たちが楽しくないと、見ている人たちも楽しくない。『見る人が笑顔になる演技』を目指しています」と中塚先生。笑顔の先に全国12連覇が見えてくる。

 バトン班には、誰がいつ始めたか分からない練習後の〝儀式〟がある。円陣を組み、一人の「せーの」の合図で、全員が「おやすみな」と声をそろえる。その後、合図を出した生徒がキャグやものまね、クイズなどを披露する。取材の日は「今、購買で食べたいパンは何でしょう」とのお題に、ほかの班員が思いついた答えを耳打ちしていた。練習中には厳しい言葉が飛ぶこともあるが、最後はやっぱり笑顔で終わるのだ(答えはサラダパン)。


【中塚 美奈子 顧問】


【村上 ひまり 班長】

取材・撮影/斉藤茂明