高校スポーツ

【長野工業高等専門学校 e-sports同好会】あらゆる「可能性」を提示 誰もが笑顔のフィールドを

たとえ陽の当たるグラウンドに出なくても、モニターの向こう側に広がるオンライン空間にも「スポーツ」はある。難しいことは必要ない。同じフィールドで共闘し、あるいは火花を散らし合い、その体験を分かち合うことで人と人とは繋がれる。長野工業高等専門学校「e-sports同好会」は、日常的な交流手段としてeスポーツの活用を進めている。

 1人1台、スマートフォン所持が当たり前の時代。手のひらの中から始められ、必ずしも身体能力を必要としない。eスポーツは年齢も、言語の壁もたやすく超える。簡単な指示のみの会話で体験を共有でき、その経験を通して新たな人間関係を育むコミュニケーションツールだ。
 e-sports同好会は、国際寮の竣工イベントとしてeスポーツを用いた留学生交流会の実施や、高齢者福祉施設に赴いて入所者と一緒にプレーする取り組みなど、より日常的な交流手段として活用している。
最大の魅力は「誰でも気軽に始められる」こと。2022年度の同好会長を務めた内田一樹さんは「プレイすることへの敷居の低さを活かしたい」と笑顔を見せる。「スポーツ」とは名乗りつつ「娯楽」でもある側面を逆手に取り、老若男女を問わないコミュニティづくりや異文化交流へと活用していきたい姿勢を示す。

 コンピューターゲームやビデオゲームをスポーツ競技に見立てた「Electronic Sports」、略して「eスポーツ」。その呼び名は1990年代から使われはじめ、2010年代頃から世界的な広まりを見せていた。競技としての裾野は広く、対戦格闘ゲームにレーシングゲーム、FPSと呼ばれる一人称視点でプレイするシューティングゲームや、カードゲームに至るまで、ありとあらゆるゲームを種目として扱う。

 「サッカーが得意」「野球がうまい」のと同じように、「ゲームの才能がある」と胸を張ったっていい。そんな才能同士が集まって切磋琢磨し、技術の向上を目指す姿は、身体を使う従来のスポーツと遜色ない。「チームプレーをすれば、コミュニケーションツールとしての側面に気付けるし、社会性も形成される。活用方法ひとつでプレイヤー自身の自己肯定感にも繋げられる」。肉体的なスポーツに苦手意識があった自身の経験を踏まえつつ、内田さんはそううなずく。

 誰でも、どこでも、誰とでも、スポーツマンシップを育むことはできる。コロナ禍のステイホームも追い風に、今や世界中に広まったeスポーツ。その可能性を掲げ、「ゲームが得意」と胸を張れる活動を提示し続ける。


【内田 一樹さん】
ゲームが得意だからこそ選択できる進路もある。従来のスポーツを不得手とする人たちの可能性を広げられるコンテンツとしてeスポーツが普及すれば、社会的にも良いことだと思います。

取材/佐藤春香