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【矢花海空:スカイランニング】            頂に到達した達成感を力に

スタートの合図とともに山頂までの山道を一気に駆け上がるスカイランニング。高校2年生の矢花海空は、そんな過酷な競技とは裏腹に、朗らかな笑顔が印象的だ。

 「スカイランニングは無酸素運動だから、瞬間的なキツさが続いてすごく辛いんだけど…」と言って唇を結びつつ、「極限まで行くのが楽しい。限界を超えた先にある、ゴールした瞬間が気持ちいい」。実際に走った者にしか分からない達成感を味わうため、過酷な競技に挑み続けている。

 「体を動かす機会を与えてあげたい」という母親の願いから、幼少期はサッカーや水泳に親しんでいた。それまでも小学校の持久走大会で毎年1位に輝くなど、走ることは得意だと感じていた。「もっと速い人たちの中に入って自分の力を高めたい」と、安曇野かけっこクラブへ入会。中学では陸上部へ所属し、本格的に陸上競技へ打ち込むようになった。
 スカイランニングの楽しさを知ったのは、小学4年で出場した太郎山登山競走。「それまでは山を走るという発想がなかった。『こんな種目もあるんだ』と思い、ただただ楽しかった」と白い歯を見せる。

 「記録の伸びもそうだが、中学生時代が一番成長したという手ごたえがあった」と矢花。その背景には恩師の存在がある。「練習しないで強くなることは絶対にないけれど、練習したら強くなる希望は見えてくる。可能性は無限大」との恩師の言葉を信じ、日々の練習に汗を流した。「気持ちも強くなり、レースで相手に離されそうになった時でも、根性でついて行けるようになった」と振り返る。

 そんなメンタルの成長が、スカイランニングでも生きる。2023年の全日本選手権ではユースAでバーティカル、スカイともに優勝すると、翌年の世界選手権ではバーティカル、スカイともに6位。さらに2024年の全日本選手権では、ユースBでバーティカル、スカイともに優勝し、2025年の世界選手権でもバーティカル5位、スカイ6位の好成績を収めた。
 「レースに出場する選手は、お互いに励まし合う大切な仲間でもある」。同年代の選手から刺激をもらうと同時に、現在はスカイランニング&トレイルランニングチーム「Ssessionzz(セッションズ)」に所属し、昨年のマスターズスカイランニング世界選手権スカイウルトラ種目男性45歳以上で優勝を果たした岡田裕也代表など「尊敬する先輩がたくさんいて、みんなで高め合える場になっている」と目を輝かせる。

 そして、まだまだ伸びしろは大きい。「頂上までを駆け上がる登りだけのバーティカルには自信があるけど、下りがあるスカイは苦手。海外の山は岩場が多いので走りにくいし、下りは恐怖心にも打ち勝たないといけない」。平日の陸上練習に加えて週末には時々山へ行き、実践練習に汗を流す。
 現在の目標は全日本選手権ユースBで優勝し、来年の世界選手権への出場権を得ること。そして将来は、「スカイランニングをもっと多くの人に知ってもらえるように、競技のかっこ良さや面白さを伝えていきたい」と展望を語る。

Profile矢花海空(やばな・みそら)
スカイランニング選手
2008年7月30日生まれ。安曇野市出身。豊科高校在学中。小学4年時に本格的に陸上競技をスタート。中学では陸上部に所属し、高校では陸上部、安曇野市駅伝部、北アルプスとその周辺エリアに拠点を置くスカイランニング&トレイルランニングチームSsessionzz(セッションズ)に所属。スカイランニングでは、2024年全日本選手権ユースBでバーティカル、スカイともに第1位を獲得し、2025年ユーススカイランニング世界選手権へ出場。バーティカル5位、スカイ6位の好成績を収めた。

取材/児玉さつき