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【松本山雅FC】苦闘したシーズンの果てに

 松本山雅FCが危機に瀕している。11月22日現在でシーズン42試合中40試合を終え、7勝12分21敗の最下位。クラブ史上初のJ3降格は避けられるかどうか。この冊子に目を通してもらっている頃には、おそらく物語の結末は明らかになっているだろう。いずれにしても現時点では、わずかな可能性をつかんで“奇跡の残留”を果たし、山雅にまつわる全ての人々が安堵とともに過ごしていることを祈りたい。

 苦闘続きのシーズンだった。
 元日本代表MFの名波浩監督が就任して以降、一時は持ち直したかに見えた。手早く課題を整理して処方箋を提示。就任2試合目の第21節・東京ヴェルディ戦で勝利を挙げると、東京五輪に伴う中断期間を挟んで再開となった第24節・ブラウブリッツ秋田戦も4-1と快勝した。「新たなスタートとして、自分たちのサッカーよりも自信を取り戻すために結果が重要だった。そこでまず(勝ち点3を)取れたのが一番の収穫だと思う」。副キャプテンも務める前貴之は、そう手応えを口にしていた。
 しかし以降は3連敗、5連敗を喫するなど黒星が大きく先行。第36節ザスパクサツ群馬戦に敗れて最下位に転落して以降、22チームの中で一番下から仰ぎ見る立場に甘んじてきた。今夏に再加入したセルジーニョは「自分のやるべきことは果たしたつもりだが、チームが勝てなかったことは残念」と悔しさをにじませていた。
 追い込まれていく中でも、もがいた。第37節・FC町田ゼルビア戦で敗れた後、選手だけでミーティングの場を設けて課題を出し合った。アウェイ後にもサポーターが大挙して押し寄せており、選手たちはそれに対する感謝の念も口にしていた。例えばキャプテン佐藤は、「こういう状況でもサポーターがこれだけ応援してくれるのは幸せなこと。その後押しに対し、結果でしっかり返したい。泥くさくてもいいのでしっかり勝ち点3を積まなければ」と決意を口にしていた。
 しかし思いとは裏腹に、白星に恵まれない。優位に試合を進めていてもゴールが奪えなかったり、先制に成功しても逆転負けしたり追い付かれたり。第40節を終えて残り2試合となった時点で、もう一人の副キャプテン安東輝は「ふわっとした失点はなくさなければいけない。日々のトレーニングで細かいことの積み重ねで失点を減らせる。あと一歩というゲームが続いているので、積み上げをおろそかにすることなく毎日練習しなければ」と努めて前向きに話した。
 こうした選手たちの思いも、勝たせたいと願う監督スタッフらの思いも、そして何より主役たるサポーターの思いも。全ての心を一つにして、史上最大級の難局を打開していてもらいたい。


   
取材/大枝令
写真提供/松本山雅FC