昨今、オーディション番組から誕生した実力派のアーティストたちが脚光を浴び、ダンスパフォーマンスはエンタメの中心へと躍り出ている。高校のダンス部を覗けば数十人規模の大所帯も珍しくない。まさに今は、大・ダンス時代といえるだろう。そしてその熱量は、決して都会だけのものではない。塩尻ダンスチーム「Heart Beat(ハートビート)」は、K|POPをはじめに世界水準のダンスを〝地方でも当たり前に学べる〟環境を確立し、信州のダンスシーンに新たな〝地殻変動〟を起こしている存在だ。

同チームにはK|POPやジャズヒップホップを学びたいと、女子を中心に年少から高校生まで約140名が在籍している(取材時)。拠点となる塩尻市贄川の専用スタジオは、2023年に静かな山あいに開設され、2024年の大規模リフォームで都会のライブステージさながらのムービングライトやレーザーを備えた本格ダンススタジオ仕様へと進化した。練習の段階から本番さながらの高揚感を味わえる空間が子どもたちの表現力を一段と引き上げる。


発表の場となるイベントにも積極的に参加し、地域の夏祭りや地元サッカークラブのハーフタイムショー、各種コンテストでの入賞を果たすなど、活動の幅は広がっている。さらにブレイキン専門のスクール、塩尻ブレイクダンス「Rocken Peace(ロッケンピース)」も始動し、カッコいい〝Bボーイ〟に憧れる男子たちの受け皿となっている。
Heart Beatが特筆すべき理由は、トップダンサーを招いたワークショップ(WS)を地方で継続開催している点にある。これまでには、TWICEのメンバー・MOMOの実姉で世界大会優勝経験を持つHANAさん、TWICE MISAMOやGirls2の振付を手掛けるRinaさんなど、第一線で活躍する表現者が次々と来訪している。この環境をつくり上げたのは、メインインストラクターの宮原里菜子さんだ。自身もダンサーとして地元の千葉から東京へ飛び出し肌で受けた、ダンスのレベルの高さ、熱量、その場の空気感。そのすべてを「長野にいても感じられる場所をつくりたい」という情熱が、贄川の地に奇跡のようなスタジオを誕生させた。2026年4月12日には、今年もRinaさんを迎えたWSが開催されることが決まっている。前回満員となった人気のWSだけに、今回も既に定員に達しているという。2025年10月には塩尻レザンホールの主ホールで初の全クラス合同発表会を開催し、130名を超える生徒がスポットライトを浴びた。発表会には塩尻市長の百瀬敬さんも応援に駆け付け、地元での注目度の高さもうかがえる。宮原さんは「ステージは人を成長させる。あ、変わったなと実感できるのがすごく嬉しい」と振り返る。今年も11月8日に同ホールでの発表会が予定されており、子どもたちだけでなく、前述のRinaさんらゲストダンサーが自身のナンバーを披露するなど、特別なプログラムも用意されるそうだ。今年もステージを経験した子どもたちは観客の歓声を受け、〝習い事の生徒〟から〝表現者〟へと変貌する瞬間をみせてくれるだろう。
豊かな自然に抱かれた贄川から、世界にも響く新たな鼓動〝Heart Beat〟。そのダンスのリズムは、これからもテンポを速め、加速し続けてゆく。




Profile
宮原 里菜子(みやはら・りなこ)※写真 上段中央
ダンス
千葉県出身。幼少期よりダンスや演劇に親しみ、大学時代ではヨガや運動生理学を学ぶ。公認スポーツリーダーや認定ダンス指導員2級等の資格も取得し、身体と健康、ダンスを融合させた独自の指導スタイルを確立する。2023 年より「塩尻ダンスチーム HeartBeat」の代表・メインインストラクター。指導者として、子どもたちの夢を形にするための場作りに情熱を注ぐ。
■塩尻ダンスチーム Heart Beat Instagram

取材/生田和徳
