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【ネイチャーガイド】上高地で見つけた水の美しさ。訪れる人の数だけ伝えたい魅力の宝庫!

 「登山案内人や山岳ガイドとよく混同されます」と爽やかに笑い飛ばすのは、ネイチャーガイドの山部茜さんだ。山登りの安全やルートを担保するのが山岳ガイドだとすれば、自然そのものの楽しさを伝えるのがネイチャーガイドといったところか。

 山部さんは1年の半分を上高地で過ごし、そこに自生する植物や動物、自然の美しさを観光客に伝える仕事に携わっている。
 東京出身で、高校卒業後に自然保全や動植物について学べる東京の専門学校で自然環境を学んだ。本人曰く進学の動機は「山を歩くことが好きだったから」と気楽なものだったそうで、就職を決める際も「最初は長野県にも来たことがなくて、先輩が上高地で働いていたため紹介されて初めて訪れました」と、正にそよ風のような半生を振り返る。現在は上高地の株式会社五千尺に設けられているネイチャーガイド部門「ファイブセンス」でディレクターを務めている。
 上高地を訪れる観光客と共に遊歩道や絶景スポットを散策し、その楽しみ方をレクチャーするのがネイチャーガイドの大切な仕事となる。利用者によって要望は様々あるといい、「花と鳥の知識は必須」と山部さんは話す。「本当にお客様によって色々なパターンの楽しみ方があって、例えば夏の自由研究のために虫をたくさん見たいというお子さん連れのご家族や、夏の蝶を目当てにお越しの方、中にはコケが好きでコケ探索をされる方もいました」と、それだけ聞いてもネイチャーガイドに求められる知識や経験の幅の広さは想像に難くない。
 山岳景勝地として全国的な観光地である上高地でも、コロナ禍の昨年、そして今年は大雨に長く見舞われた厳しいシーズンが続く。そんな中であっても、ガイドはお客の「楽しさ」を追求している。「あまりの大雨や危険を伴う場合にはガイドは行いませんが、実は雨の日でも上高地って楽しめるんです。葉っぱによって水を弾く濡れない葉っぱもあれば、木の種類によって幹の濡れ方が違って、ある木は風上側しか濡れないとか。雨ならではの楽しみ方をお伝えしています」。ただ自然を楽しむだけでなく、お客様ファーストの「接客業」。そんなプロの仕事ぶりが垣間見える。

 そんな山部さん自身が上高地で最も好きなことは「水の美しさ」だという。「季節によっても時間によっても表情が違って、全然飽きないんです」。お客様の手助けになれば嬉しいが、自分が上高地で暮らせることが実は一番幸せかも。そう言って笑顔が咲いた。

<取材/生田和徳>
※撮影協力:5HORN パルコ松本

◆山部 茜 AKANE YAMABE
1987年1月4日生まれ/東京都八王子出身。高校まで八王子で過ごし、東京環境工科専門学校で自然環境について学ぶ。2007年4月より株式会社五千尺のネイチャーガイド部門「ファイブセンス」に所属。