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「積小為大」の新シーズン スタイル変革へ準備着々

松本山雅FCの2023シーズンが、装い新たにスタートを切った。霜田正浩監督をはじめコーチングスタッフを一新したほか、元日本代表FW渡邉千真など選手11人が新加入。クラブとしては「One Soul 積小為大(せきしょういだい)」をスローガンに掲げ、今季こそJ2復帰を目指して前進する決意だ。


 新体制は指揮官のほか、横浜FC監督などを歴任した早川知伸コーチ、スペインでの指導歴を持つ坪井健太郎コーチなど。霜田監督は「コーチ陣はすごくいいメンバーがそろってくれた。経験があるし、ちゃんと選手に説明もできるし、キャラクターもいい」と話す。選手は清水エスパルスからMF滝裕太が育成型期限付き移籍で、年代別日本代表だったDF藤谷壮がギラヴァンツ北九州から完全移籍でそれぞれ加入。さらに、2012〜16年に所属したMF喜山康平が7年ぶりに復帰した。

 昨季までの反省を踏まえ、主体的に攻撃するスタイルの構築を模索している。霜田監督はその手法を得意としており、始動して以降はボールを使った練習メニューを多く導入。「試合でボールを使わないことはないし、試合のための練習。ボールをたくさん使って、相手のゴールにどうボールを入れるかをメインに考えて練習したい」と力説する。

 ボールを大切にするための投げかけは、練習から頻繁に行われている。例えばシンプルなボール回し。1セットが終わった後で選手たちに投げかけたのは、基本に忠実であることの大切さだった。ヒールなどのトリッキーなプレーを指摘。「それもいいけれど、まずはオープンで受けることが大事」と繰り返し強調した。
 練習メニューによっては、ボールを動かしながらノンストップで動き続ける内容も。ボールを使いつつ心肺機能や走力を高めていく方針で、指揮官は「昔は走り込みの時期だったけど、走っていてもサッカーはあまりうまくならない。やはりボールをちゃんと使って、サッカーがうまくなった選手が走れるようになるのが一番」と話す。

 選手たちも、こうしたトレーニングを前向きに受け止める。在籍7年目を迎えるDF橋内優也は「新しい監督に代わって求められることも変わる。それを自分の中で整理してどんどん成長できればいいと思っているので、非常に楽しみ」。大卒ルーキーの一人、MF國分龍司は「自分のサッカー観と似た部分があるし、いい感触でトレーニングできている」とうなずく。
 こうして新たなスタイルを構築していくが、土台となるものは変えずに進めていく。指揮官は「今までの勝ち方、プレースタイル、魅力はできるだけ残したい」と明言。言及した「魅力」の中には、ハードワークすることやゴール前で体を投げ出すこと、クリーンに戦うことなど、松本山雅として大切にしたい要素も含まれる。

 スローガンの「積小為大」は、小さな物事の積み重ねがいずれ大きな成果となる――という意味。一人ひとりが愚直に日々を積み重ね、最後に結果をつかむ。そのための長い長い戦い。和歌山、鹿児島での長期キャンプを経て3月初旬の開幕に向かう。

取材・撮影/大枝令