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負のジンクス破る完勝            アウェイ琉球でJ初勝利

悪しきジンクスは破るためにある。J3リーグ第16節の松本山雅FCは、敵地でFC琉球と対戦。国内でも飛び抜けて高温多湿で、松本とは全く異なる気候下での一戦だ。過去4回のアウェイ琉球は1分3敗の未勝利となっており、今回も苦戦が予想された。
 ただでさえタフな環境での試合を強いられるだけでなく、天皇杯2回戦・J1清水エスパルス戦から中2日。しかも公式戦3連敗中という難しいシチュエーションだった。
 だが結果は3―0の完勝。緑の戦士たちは、琉球の地で目を見張る躍動を見せた。ボールを動かしたがる相手の攻撃に手を焼きはしたものの、要所を遮断するなどして耐える。そして21分、GK大内一生からMF村越凱光へロングフィード。一発のパスで相手の最終ラインを破り、先制ゴールを奪った。

 ハーフタイムを挟んで後半は、MF大橋尚志を投入して陣形を組み替える。相手の攻撃に対して蓋をするなどの狙いで、これがハマってプレッシングが活性化。そして若きエース格・FW田中想来が2得点と仕事をした。

 特に、47分の1点目は圧巻そのものだった。DF宮部大己からのロングフィードを収めると、相手センターバックとのぶつかり合いを制して難しい体勢から強烈なシュートを見舞った。「負けないようにキャンプからしっかり身体を作ってきた。肉弾戦の中でそれをしっかり出せたのは、一つのポイントだったと思う」と納得の表情を浮かべる。

 さらに4分後、高い位置でMF安永玲央が奪ったボールを受けてシュート。「ボールを受けた時点でパスは考えていなかったし、何を言われても決めればいいというくらいに思っていた」と、ストライカーらしい風格も漂わせ始めた。
 その後も琉球の攻撃を遮断しただけでなく、オープンになった展開の中で4点目をうかがう松本山雅。6月の沖縄は日が長く、後半途中の19時30分ごろまで空を染める。東シナ海の残照がすっかり宵闇に溶けた頃、盤石の勝利を意味するホイッスルが鳴り響いた。
 JFL時代の2011年以来、14年ぶりとなる琉球での白星を手中に収めた。「選手は素晴らしく、最後までファイトしてくれた。この難しい環境下でも最後までハードワークができて、集中してゼロで抑えられた。チームにとってすごく大きな勝利になった」。早川知伸監督も、納得の表情で選手たちを称えた。

 極めて難しいシチュエーションで白星をもぎ取った。これを過信ではなく自信に変え、安定したハイパフォーマンスから勝ち点を積み重ねられるかがカギ。例年のように夏場は特に高温多湿のアウェイでタフな戦いを強いられており、その予行演習としてもうってつけの一戦となった。

取材/大枝令