次から次へと試練が訪れる。松本山雅FCは残り7試合となった段階で9勝9分13敗(勝点36)の15位に低迷。この時点でJ2昇格はすでに風前の灯となっている。輪をかけるように、ホームスタジアムのアルウィンが鉄骨部材落下に伴って使用停止。10月21日時点で先行きは見えておらず、クラブ運営にも深刻な影響が出ている。



まずはピッチ内。ホームスタジアムが使えない――という逆境で、せめて白星を挙げて明るいニュースを届けたいシチュエーションだ。しかし10月3日に鉄骨部材落下が報じられて以降のアウェイ3試合はいずれも0-1で3連敗。J2自動昇格はすでに消滅しただけでなく、J2昇格プレーオフ圏内(6位)までの差も15まで拡大している。
とりわけ、10月15日のツエーゲン金沢戦は攻守に精彩を欠いた。開始4分にあっさり失点すると、反撃したい中でも攻撃が形にならない。シュート数わずか4本で完敗。早川知伸監督は「結果が伴わなかった責任は全て自分にあると感じている」と険しい表情で言葉を紡いだ。
攻守ともピッチ内で意図を共有できず、距離感がちぐはぐ。ベクトルが四散して統一感を欠いた。それを踏まえて次戦のSC相模原戦は狙いを統一。試合開始から15分は相手の背後に流し込む――と目線をそろえ、実際に序盤から相手陣内でゲームを進めることに成功した。
しかし肝心のゴールまでは到達せず、相模原も落ち着きを取り戻す。そして後半、カウンターから手薄なエリアを攻められて失点。攻守の切り替えで相手に上回られ、あっさりゴールを陥れられた。反撃するべく陣形を組み替えるなどで対抗したものの、有効打は繰り出せず三たび0-1で敗戦のホイッスルを聞いた。
「シーズンも終盤まで来ていて、求められているものはチームとしての完成度だと思う。そういった意味では今シーズンを象徴する試合というか…。結局何がしたいのか、攻守においてハッキリしていない」。試合後の取材エリアで、副キャプテンでもあるGK大内一生は苦しげに絞り出した。

並行してホームゲームの開催場所も急遽の検討を余儀なくされた。AC長野パルセイロの協力を得て、10月26日のカマタマーレ讃岐戦は長野Uスタジアムでの開催。席割の再設定やスポンサー露出の調整、イベントやスタジアムグルメの変更など、運営に関わるあらゆる面で対応に奔走した。
「可能な限りアルウィンと同じ環境で観戦してもらいたい」とクラブの運営担当者は話す。サポーターの熱量と裏方の汗に報いるためにも、せめて残りの試合は白星を挙げられるか。松本の街を明るくするのも沈ませるのも、トップチームのパフォーマンスに懸かっている。

取材/大枝令
