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苦しむAC長野         求められる決定力

第33節の琉球戦を終え、クラブワーストに並ぶ9試合連続未勝利(6分け3敗)。残留争いにいるAC長野パルセイロが、長いトンネルから抜け出せずにいる。

高木理己監督も「ゴールネットを揺らすということに尽きる」と話すように、勝ちきれない大きな要因は〝決定力不足〟にある。未勝利の9試合は計5得点で複数得点はゼロ。好機を生かし切れずに勝ち点を取りこぼす試合が続く。

松本山雅との「信州ダービー」となった第31節では13試合ぶりに先制に成功。しかし、直後にオウンゴールで追いつかれた。その後は、途中出場のFW浮田健誠が中央で起点となり、攻撃を活性化させたが、MF近藤貴司は「2点目を取るチャンスで点を取れなかった」。終盤に巡ってきた決定機を浮田らが仕留めきれず、ドロー決着。浮田は「ここまで攻めたら決めないといけない。もう『惜しい』で終われる時期じゃない」と言葉には悔しさがにじんだ。

岐阜と対戦した第32節も後半10分に先制しながら8分後に同点ゴールを許した。この試合でも終盤にビッグチャンスを迎えたがMF三田尚希のシュートはゴール右に外れ、直後の失点で逆転負け。両チームの決定力の差が如実に表れる結果となった。

「勝つことで必ず流れは来る。まず一つ勝つ」(三田)と意気込んだ琉球戦。後半開始早々に琉球に退場者が出て数的優位を得ると主導権を握り、苦しみながらも後半44分にMF忽那喬司の2試合連続ゴールで拮抗した試合に風穴をあけた。

終了間際の先制点で相手は10人。誰もが9試合ぶりの勝利に手をかけたと思ったが、またしても先制直後に悪夢が待っていた。

琉球のパワープレーに押され、後半48分にクロスをクリアしようとしたDF黒石貴哉のヘディングがそのままゴールに吸い込まれた。「貴哉君(黒石)は責められない」(DF杉井颯)と勝ち越しを狙って、1人少ない琉球を攻め立てたが、終了間際のMF藤森亮志のシュートはわずかに枠の右。最後のチャンスをものにできず、サポーターの勝利への期待はため息に変わった。

「あのシュートが入っていれば勝っていた」と藤森。しかし、それは全てのシュートに言えることだろう。ただ、現実は1点に泣く試合を繰り返している。高木監督は琉球戦後、「できていないことがあるから勝てない。そこから逃げずに向き合うこと」とシュート精度の改善を誓ったが、残り5試合でどこまで成果を見込めるのか。

1勝で残留争いの戦況は大きく変わる。それにも関わらず第17節からの17試合でわずか1勝。勝利の兆しがないわけではないが、ことごとく勝ち点3をつかみ損ねている。J3参入11年目にして訪れている最大の危機。「僕らは勝つ以外に生き残る方法はない」とDF大野佑哉は語る。かつてない難局を乗り切るために、目の前のゴール、そして勝利への執念を見せるしかない。