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総力戦             チャレンジの姿勢を忘れず

不安定な戦いぶりながら、上積みは感じられる。ケガ人が多い中でも、チーム全員でチャレンジしている最中だ。
 藤本主税新監督のもと、序盤戦を駆け抜けるAC長野パルセイロ。開幕から白星と黒星が交互に続き、波に乗り切れない時期を過ごした。6試合を終えて3勝3敗とイーブンだったが、7試合目にして今季初の連敗。幾分かの暗雲が立ち込めた。

 連敗を喫した2試合には、いくつかの共通項が見られた。第7節はツエーゲン金沢、第8節は鹿児島ユナイテッドFCに対し、いずれも1―3のスコアで敗戦。3点を先取される苦しい展開で、短時間での連続失点も繰り返した。
 先制されて気落ちしたわけではない。最終ラインの砂森和也からすれば、「点を取られて前がかりに行かないといけないときの管理だったり、そういうところを整理しないといけない」。点を取り返しにいく中で、自陣でのボールロストが起きたり、守備のオーガナイズが乱れたり――。チャレンジの裏返しでもあった。

 それでも選手たちはチャレンジし続けた。2連敗で迎えた第9節・FC琉球戦。「連敗はしてしまったけど、昇格するチームは3連敗しない」と伊藤恵亮が言うように、ホームで悪い流れを断ち切ることが至上命題だった。

 前半から圧倒的にペースを握るも、あと一歩のところでゴールが決まらない。すると後半、セットプレーからワンチャンスを決められて失点。3試合連続で先制される展開となったが、「2点を取れる日だと思っていたので、慌てずにゲームを進めた」と藤本監督は言う。
 直近2試合のような連続失点を許すことなく、選手交代を重ねて反撃に出る。86分には途中出場の吉田桂介が攻撃を組み立て、同じく途中出場の忽那喬司が同点弾。惜しくも逆転までには至らなかったが、1|1と引き分けて連敗を「2」で止めた。

 ゴールを決めた忽那は、ケガから復帰して6試合ぶりの出場。前半に盟友の浮田健誠が負傷交代したこともあり、「試合に向かう気持ちは今までで一番大きかった」と明かす。ほかにもゲームキャプテンの大野佑哉、最年長の加藤弘堅ら負傷者が続出しており、指揮官の言葉を借りれば「総力戦」の状況だ。

 ただ、それは今に始まった話ではない。チームは開幕からケガ人が多い中、誰が出ても遜色なく戦ってきた。5月はゴールデンウィークも含めて連戦が続き、松本山雅FCとの“信州ダービー”も控えている。引き続き30人全員の力で乗り越えるまでだ。

取材/田中紘夢