パフォーマンスの乱高下が続く。
松本山雅FCは第12節ヴァンラーレ八戸戦で黒星を喫したものの、中2日の首位・大宮アルティージャには2ー0で完勝。
その後は再び勝ち切れない。それぞれの試合に理由があり、粘り強く改善しなければ安定したツヨサを得るのは難しい。
八戸戦。高い位置から猛烈なプレスをかけてくる相手の圧力に屈した。ボールを丁寧に繋ごうとして失敗したり、前にパスを出せなかったり。「自分たちのミスから危ないシーンを1〜2回ぐらい作られて、そこから勇気を持って前進できなくなっていた」。DF橋内優也はそう振り返る。
だが、連戦で迎えた次節大宮戦は、見違えるようなゲームを演じた。ロングボールを大胆に織り交ぜながら前進。終盤に浅川隼人と藤谷壮が立て続けにゴールを奪った。守備も元日本代表FW杉本健勇などに仕事をさせず、会心の無失点。霜田正浩監督がミーティングで掲げた「ハードワークは才能にまさる」というフレーズを体現する一戦だった。
これまで無敗の首位に初めて土をつけたこの一戦。GK大内一生が「戦い方がはっきりしてきた。以前は後ろから繋ぐことにこだわりすぎて、自分たちでゲームを壊す場面が多かった。今後もロングボールを意図的に使っていくことは必要」と話す通り、柔軟な戦い方に手応えを得られた――かに見えた。
だが、物事は簡単に運ばない。次の公式戦は長野県サッカー選手権決勝で、AC長野パルセイロとの信州ダービーだった。必勝が求められ、しかも強風でのゲーム。風上の前半はロングボールが効果的で、先制に成功した。しかし風下の後半も成功率の低いロングボールに逃げ、最終的には後半終了間際で追い付かれた末PK戦で苦杯をなめた。
2年連続で天皇杯切符を逃した山雅。残るリーグ戦に全精力を注ぐものの、第14節ギラヴァンツ北九州戦もドローに終わった。ダービーと同様、1ー0でリードした後半アディショナルタイムに失点した。
北九州の戦術的なポジショニングに対して統一感を持った守備ができず、終始相手に主導権を握られた。「守備に後手を踏んでパワーを使う分、(ボールを)取った後に攻撃へのパワーが出ていなかった」とDF常田克人。実際に攻撃も機能せず、MF山本康裕は「ボールをもらおうとしない。切り替えも単純に遅い」と苦言を呈した。
14試合を終えて5勝5分4敗(勝ち点20)の10位だが、2位FC琉球までの勝ち点差はわずか3。混戦のリーグで頭ひとつ抜け出すには、的確に課題を抽出しながら濃密な日々を送るしかない。それが真のツヨサに繋がる。キャプテン菊井悠介は「口で『頑張ります』と言うのは誰でもできる」と話し、行動と結果で示すことを誓った。
取材/大枝令