6月1日。今季最初のヤマ場となる首位大宮戦に臨んだAC長野パルセイロ。キャンプから「大宮」の名前を挙げるなど意識し続け、「ここで負けたら優勝はない」とMF近藤貴司は口にするなど意気込んで臨んだ一戦だったが、現実は甘くなかった。
大宮は元日本代表のFW杉本健勇をはじめ、攻守に能力の高い選手がそろい、この試合前までで2位に勝ち点10差をつけて独走態勢を築くなどJ3では頭一つ抜け出た存在。それでも、AC長野は自分たちのスタイルで真っ向勝負を挑んだ。
前半を同点で折り返したが、後半になるとそれまで対応できていたワンタッチパスに「自分たちがついていけなくなった」とDF大野佑哉。徐々に細かいパスワークで崩されるようになり、5分、13分に連続失点。さらに24分にはクロスのクリアボールをエリア外で拾ったMFアルトゥールシルバに豪快なミドルシュートを蹴り込まれた。大野が「スーパーシュート」と振り返った一撃で試合を決められた。
前半のようにAC長野のスタイルが通用した部分もあったが、「シンプルに強かった」とDF杉井颯。ボールを収める技術や、一つ一つのパスの精度などで、J1の舞台も経験している大宮に力の差を見せつけられた。
昇格を目指すAC長野にとって大きな壁となって立ちふさがった大宮。8月の第25節には長野Uスタジアムでの再戦を控え、MF古賀俊太郎は「優勝や昇格を本気で口にするなら、こういう試合の後にどういう試合を見せられるか」と前を向いた。
その言葉通り、翌週のY.S.C.C.横浜戦(第16節)はFWの浮田健誠と進昂平がそれぞれ2ゴールを挙げると、守備陣も高い集中力を発揮し、今季2度目のクリーンシートを達成。連敗していた悪い流れを止めて見せた。
快勝で再び上昇気流に乗りたいところだったが、その後の天皇杯2回戦で今季16年ぶりにJ1で戦う東京Vに0―5で大敗。高木理己監督が「日常の差が点差に表れた」と振り返ったように、攻守の切り替えやボールタッチなど基本的な技術の高さに圧倒された。さらに、第17節の岩手戦では、最下位相手にミスを連発し痛恨の黒星を喫した。
岩手戦で今季初ゴールを決めたMF西村恭史は試合後、「ミスした後のプレーはうまい下手関係なく誰でもできる。そこをもっと出していかないとずるずる下に引き込まれてしまう」。勝つべき試合で攻守に精彩を欠いたことへの危機感を口にした。
間もなくシーズンは折り返しを迎える。快勝の後に大敗したり自滅で敗れたりするような不安定な戦いぶりではJ2昇格は見えてこない。力の差を見せつけられた悔しい敗戦やもどかしい敗戦を経て、チームはどう変化していくのか。もう、〝学び〟の時期は終わりにしなくては目標には届かない。指揮官は「目標がはりぼてにならないように」と気持ちを込める。本気で昇格を目指すのなら、ここから結果を積み重ねるしかない。
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