大詰めの局面で、もどかしい足踏みを繰り返している。松本山雅FCはリーグ残り5試合で11位。J2自動昇格の可能性が消滅したほか、J2昇格プレーオフ圏内(3〜6位)にも絡めない状況が続く。
勝点3まであと一歩。それはわずかな違いのようでいて、大きい差なのかもしれない。最短1年でのJ2復帰を決めた大宮アルディージャに敗れたのが9月7日。以降の5試合は負けなしで切り抜けてきた。
しかし、内訳を見ると1勝4分け。カマタマーレ讃岐戦こそ攻守の狙いがハマって大量4得点の白星となったが、それ以外は全て1ー1だった。「2点目を取れない」「無失点で終えられない」という攻守の課題が浮き彫りになっていた。
そうした状況で迎えた、第33節ガイナーレ鳥取戦。攻撃の組み立てに長けたベテランのセンターバック・高橋祥平を25試合ぶりの先発に起用した。「この半年は本当に悔しい思いをしたし、試合に出られないキツい時期だった。でも諦めずにまたチャンスが来たので、この試合が最後のチャンスだと思ってプレーした」と高橋は振り返る。
霜田正浩監督の狙い通り、高橋が攻撃の起点となって縦パスを差し込んだり、間のスペースに落ちてきた選手の胸元に入れたり。村越凱光の鮮やかなシュートも決まって先手を取ったものの、以降は守備が崩れた。守備の対応ミスから同点弾を許すと、1ー1の後半も連続失点。巻き返しはしたが、ホームで3ー4黒星という苦い結果に終わった。
「得点は取れたけれども、やはり安い失点を簡単に与えてしまうと勝点1すらも逃げてしまう。まずは守備をしっかりやって、ちゃんと2点目を取ることを、残り試合で突き詰めてやりたい」
試合後の霜田監督はそう振り返った。守備の細部はシーズン中に何度かマイナーチェンジを施して一定の成果は挙げてきたものの、要所でもろさを覗かせる。攻守の切り替えなど意識ひとつで変えられる要素も、逆境に立たされた時にやすやすとその遂行力を失ってしまう。そのガラス細工のようにデリケートなバランスを取り切らなければ勝利に至れない。
こうした難局でも光明となるファクターは、頼れるストライカー高井和馬の復帰だ。2月上旬のキャンプ中に左膝前十字靭帯損傷などの大ケガを負ってリハビリの日々。10月13日の第32節ツエーゲン金沢戦でピッチに戻ってきた。次節の鳥取戦ではPKながらも加入後初ゴールを記録。「相当な覚悟を持って移籍してきた。ここでやらなければ終わりだと思っている」という言葉通り、土壇場での活躍が期待される。
このほかにも山本龍平、村越ら個々の成長が見られる選手は散在する。あとはその積み上げを、チームの力として機能させられるか。勝って、勝って、勝ち抜くことでしか、松本山雅の未来は切り開けない。
取材/大枝令