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新緑の季節            次々と芽吹く若き才能

長い冬を越えて、豊穣の大地から若葉が芽吹きはじめた。J3の松本山雅FC。第9節終了時点で2勝3分2敗と戦績こそ平凡だが、そもそも消化試合数が2少ない。さらにリーグ戦とは別のルヴァンカップでも成果を挙げており、伸びしろを大いに感じさせる。
 J3第9節・アウェイのカマタマーレ讃岐戦が、象徴的なゲームだった。0-5とショッキングな大敗を喫した前節から、先発を6人も変更。このうちDF二ノ宮慈洋、MF松村厳、FW田中想来はいずれもリーグ戦初先発の若手だった。
 それでも試合は2-0とし、4試合ぶりに白星を挙げた。とりわけ田中はリーグ戦初得点を含む2ゴール。13分の先制点はクロスに合わせるポジショニングが光り、ゴール前混戦からねじ込んだ29分の追加点は先に触るアラートさでまさった。
 「2点取れてホッとしている。2点目もいるべき場所にいられた結果だと思う。2点ともラッキー的な形にはなったけど、1点は1点。もっとバリエーションを増やして得点できるような取り組みをしたい」。アカデミー育ちで高卒3年目の若武者は、そう言って充実感をにじませた。
 同じアカデミー育ちなのが、3バック左で起用された松村だ。稲福卓らと同期だが、自身は高卒でのプロ入りがかなわず。専修大を経由して今季加入となった。「山雅に絶対に戻って来よう――という気持ちで4年間生活してきた」。相手の攻撃をつぶすだけでなく、利き足とは逆の左も器用に使いながら攻撃の起点にもなった。

 そして3バックの中央には、高卒4年目の190cm・二ノ宮慈洋。冷や汗をかくピンチもありはしたが、周囲と円滑にコミュニケーションを取りながら無失点で切り抜けた。「センターバックとして考えていたのは内容よりも結果なので、まず結果が出せたことはよかった。チームの流れが良くない時で、自分もこの試合に懸かっている。そんなときに無失点で勝てたという結果が出せて本当にうれしい」と納得の表情を浮かべた。

 このほか、ルヴァンカップではアカデミー出身のMF稲福卓、MF萩原正太郎もピッチに立った。稲福は1回戦のJ2サガン鳥栖戦でPKをゲットする大仕事。高卒ルーキーの萩原はJ1アルビレックス新潟との2回戦に途中出場し、センターパートの髪をなびかせて攻守に疾走した。アカデミー出身6人のうち最年長のDF樋口大輝は昨季から試合に出ており、そもそも重要な戦力として存在感を示す。


 アカデミーに本格的に力を入れ始めたのは、Jリーグ参入の2012年。2・3月のJ2月間MVPに輝いたFW小松蓮(ブラウブリッツ秋田)を筆頭格とし、トップリーグで活躍する人材を輩出するようになってきた。地域の後押しも受け、数多の指導者が耕してきた豊穣の大地。次々と伸びる若い芽は、スポットライトを浴び、白星を肥料にし、さらに成長スピードを速めていく。

取材/大枝令