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攻撃の量と質            両輪に目を向けて

試行錯誤の日々が続いている。J3リーグを戦うAC長野パルセイロは、開幕から5試合で3勝と好調なスタートを切った。しかし、以降は8試合未勝利が続き、その間は複数得点が一度しかない。得点力不足という課題と向き合いながら、反転攻勢を進める構えだ。

 「2点取るチームになりたい」。1―1と引き分けた第11節・SC相模原戦の試合後、藤本主税監督はそう語気を強めた。
 第7節から8試合未勝利。その間は複数得点だけでなく、シュート数が10本を超えた試合も一度しかない。リーグ全体を見てもシュート総数が最下位で、スタッツからすれば合点のいく結果だった。
 第14節・奈良クラブ戦では9試合ぶりの勝利。開始6分に先制して1―0と逃げ切ったが、後半は防戦一方だった。「『勝ちがすべてだ』と言う人もいると思うけど、俺は全くそうは思わない。とにかく良い勝ちっぷりで勝ちたい」。藤本監督の言葉に一切の満足感はなかった。
 続く第15節・ガイナーレ鳥取戦では0―2と完封負け。得点力不足という課題を露呈した中で、指揮官は攻撃的に舵を切る。「シュートが少ないし、シュートがうまい選手はいても打たせる状況を作れていない」。まずはゴール前にボールを運ぶべく、選手に対してアクションを求めた。
 それが形として現れたのが、第16節のFC岐阜戦だ。開始2分に先制を許すも、18分に同点。左サイドの砂森和也から、中央で浮田健誠、古賀俊太郎とテンポよくボールが繋がる。近藤貴司を経由して右サイドのターレスに運び、長谷川雄志がアンダーラップ(内側から追い越す動き)。折り返しを藤川虎太朗が合わせた。チームとしてアクションが連鎖し、自陣から完璧に崩しての得点。前半のうちに再び勝ち越されたが、後半も引いた相手に対して畳み掛けた。今季最多となる16本のシュートを放つも、ポストにも嫌われて2点目には至らず。1―2と敗れ、まだまだ足りないことを思い知らされた。「シュートは多く打っていたけど、決め切る力が必要だと感じる。それは日頃の練習からしか身につかない」。スコアラーの藤川が言うように、〝量〟は増えた。ただ、そこに〝質〟が伴わなければ、ゴールという数字は増えていかない。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」――これは藤本監督の常套句だ。正確な弾道のシュートではなくとも、相手に当たって入ることは往々にしてある。その数をこなす中で照準を安定させ、命中率を高めていきたい。





取材/田中紘夢