眠れる獅子を呼び覚ますべく、大きく舵を切った。AC長野パルセイロは3月31日、藤本主税監督の契約解除と、小林伸二監督の就任を発表。昨季から数えて13連敗(PK戦での敗戦を含む)という成績不振を受け、Jリーグ百年構想リーグで60チーム中初の監督交代に至った。

監督交代前の4試合で17失点と守備が崩壊。チーム戦術以前に個人戦術の脆さが目立ち、歯止めが効かなかった。0―5と大敗した第6節・松本山雅FC戦は最たる例で、球際や切り替えなどの局面で後手を踏み、同県のライバルに大差をつけられた。
「守備の規律、原理原則ができていない。成長曲線がなだらかに上がっている一方、そうなっていたら上がりきらない」と強化責任者の西山哲平スポーツダイレクター(SD)。トップチーム初挑戦の藤本前監督のもと、昨季から「土台づくり」を進めてきたが、土台が弱いままではいくら積み上げようとも崩れてしまう。成長曲線を加速させるためにも立て直しが急務だった。
そこで白羽の矢を立てたのは、経験豊富な65歳の小林監督だ。同氏は過去に5クラブを昇格に導き、守備の構築にも定評がある。昨季はJ3の栃木SCを率い、1試合平均0.95失点に抑えた。西山SDは現役時代に大分トリニータで指導を受けており、その実体験から「最適な人材」と見込んで再建を託した。

監督交代の効果はすぐに現れた。新体制初陣となる第9節・藤枝MYFC戦で2|0と勝利。堅実な守備からカウンターで得点を重ね、昨季から数えて14試合ぶりの白星をつかんだ。就任から4日間という短い準備期間だったが、小林監督は「選手が頑張ってくれたのでこういう結果が生まれた」とイレブンを称える。


チーム最年長の近藤貴司は「伸二さん(小林監督)が最初のミーティングで、自分たちの守備のウィークを言ってくれた。それを練習から落とし込んだ中で、実際に今日はやれた」と手応えを話す。立ち位置や体の向きなど根本から見直しを図り、意識の変化がプレーにも反映された。

続くジュビロ磐田戦では90分を終えて1―1で、PK戦の末に敗戦。その後のいわき戦も0―1と敗れはしたが、前半終了間際に退場者を出した中でも1失点に抑えた。監督交代前には4試合で17失点を喫していた守備が、3試合で2失点と大きく改善された。
初陣の藤枝戦で決勝点を挙げた吉澤柊は、「これをもっと継続できれば、より良いものになるという手応えがある」と前を向く。名伯楽のもとでここから仕切り直しだ。

取材/田中紘夢
