木々が緑を深める季節に、松本山雅FCも躍動感を増してきた。J3リーグ38試合のうち3分の1に当たる13試合を消化した段階で、5勝4分4敗(勝ち点19)の8位。ただ直近は信州ダービー2試合を含む5連戦を3勝1分1敗で切り抜けるなど、右肩上がりの曲線をくっきりと描き始めた。
その要因は明らかだ。早川知伸監督が言う「ベースの部分」が、トレーニングを重ねるごとに定着していること。ベースとは走る、戦う、最後まで諦めない、細部を突き詰める――といった、いわばサッカーの根幹の部分だ。
象徴的なのは、5連戦のラストとなった第13節ガイナーレ鳥取戦。気温27・6℃と一気に暑くなった環境下で、4日前の信州ダービー長野戦と同じ先発11人をピッチに送り出す。それでも、蓄積した疲労を感じさせないハイパフォーマンスで1―0の勝利を収めた。「みんなシンドかったと思うけど、よく頑張ったと思う。クリーンシート(無失点)でしっかり勝てたことは非常に良かった」。大卒2年目のDF樋口大輝は声を弾ませる。
「5試合で得られたことは本当に多かったと思う。リーグ戦、天皇杯(県予選)含めて全員で戦えたことも大きかったし、成長できた5試合になった」と、ベテランDF小川大貴も納得の表情を浮かべる。これまではDF二ノ宮慈洋、DF松村厳、FW田中想来など抜擢された若手が先発に定着。試合を重ねるごとにたくましさを増している。
例えば二ノ宮。4日前の前戦の長野戦はワンチャンスを仕留められてドローに終わり、「一発で決められてしまうのが自分の中でイメージとしてあったから、縦1本の裏とかのアラートさをしっかり出していこうと思って試合に入った」と話す。実際、この日は相手をシュート2本に抑える完璧な内容だった。
このほか田中も左足で角度のない場所から射抜いたゴールが決勝点に。これでチームトップの今季5ゴール目となり、アカデミー出身の20歳が力強くチームを牽引している。それでも自身は現状に満足せず、「居残り練習とか自分と向き合う時間をさらに大事にしていかなければいけない」とさらなる成長に対して貪欲さを見せる。
タフなシチュエーションの試合で勝ち切り、指揮官も「選手たちは本当に勝ちにこだわっている。しっかりとベースの部分を含めて戦うことを積み上げている中で、成長をすごく感じている」と納得の表情を浮かべる。
成果が出始めた日々の取り組み。あとはこれを愚直に続け、最後まで右肩上がりの成長を続けられるかどうか――だ。それもまた、日常のトレーニングからどれだけこだわり抜けるかに尽きる。
「これは続けていかなければならないし、これが当たり前のベース。そこからクオリティをもう一つ上げていくことで上位に食い込んでいくし、最終的には自分たちが掲げた昇格に持っていく」と早川監督。雷鳥は愚直に、汗を流し続けながら頂を目指す。
取材/大枝令
プロスポーツ