歯がゆい思いをしたまま、シーズン残り10試合のカウントダウンを迎えた。
9月14日、J3第28節アウェイのFC今治戦。松本山雅FCはボランチ米原秀亮のプロ初ゴールで先制したものの、6分後に失点して1ー1で終えた。J2自動昇格圏・2位の今治との勝ち点差を詰めるチャンスだったが、差は14のままとなった。
「セットプレーのセカンドボールでフリーにしてしまった。たった1回。その1回にもっともっとこだわらなければいけない。2点目を取るチャンスもあったので、2点目を取らなければいけない。それを逆転昇格のために絶対やらなければいけない」
試合後の会見で、霜田正浩監督はそう強調した。
その「1回」に今季は泣き続け、伸び悩みが続いている。第27節大宮アルディージャ戦も、一瞬の隙を突かれて失点。堅牢な相手のディフェンスを崩せず、首位独走中の大宮から勝ち点を奪うことはできなかった。さらに巻き戻しても、隙を見せない試合が継続しない。
「今のままでは本当にヤバいと思う。もっと危機感を持って、次の試合に向かっていきたい」とFW安藤翼。DF樋口大輝も「負けてはいないけど、勝点3を取らなければいけない状況。本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」と絞り出した。この日は遠隔地の愛媛・今治市まで約300人のサポーターが来訪。その思いに応えることもできなかった。
光明があるとすれば、まずはケガ人の復帰だろうか。まず2月のキャンプで左膝前十字靭帯損傷の大ケガを負ったFW高井和馬が、長きにわたるリハビリを経て全体練習に合流。「僕が復帰して新しい風を吹かせるじゃないけど、チームの風向きとか雰囲気を変えられる役目ができればいい」と意気込みを語る。
さらに、5月の負傷離脱が長引いたDF馬渡和彰もピッチに復帰。今治戦では途中出場ながら15試合ぶりのピッチに立ち、復活を印象付けた。もちろんトップコンディションではないものの、一歩前進した格好。「膝の痛みが落ちなくて、ずっとリハビリして復帰しようとしてはダメで…という感じだった。残りの試合は自分が出て巻き返して、チームが息を吹き返すような試合を見せられたら」と力を込める。
成長著しい若手がいるのも好材料。MF村越凱光はファーストタッチを磨いて土壇場のゴールを奪ったし、米原はピッチの中央でリーダーシップを取るようにもなった。勝敗は安定せず中位に苦しむ松本山雅。こうしたプラス材料をチームの力に変え、終盤戦で猛スパートをかけるしかない。
取材/大枝令