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夏羽のライチョウ        装い新たに頂目指す

一進一退しながら、ようやく進化の兆しが見えてきた。シーズン後半戦に突入したJ3。中位での苦戦が続く松本山雅FCは、第21節FC大阪戦で2ー0とし、4試合ぶりの白星をもぎ取った。「ハードワークがすごいFC大阪に対して、その土俵でもしっかり勝つことができたのが勝因だと思う」。霜田正浩監督は手応えを口にした。

 これで8勝目だが、従来の白星とは異なる意義があった。この日迎えたFC大阪はハードワークを徹底的に追求し、ロングボールとセットプレーも含めて強烈な圧力をかけてくる相手。パスを繋ぐのにはこだわらないシンプルなスタイルで、J3上位争いに食い込んでいる。山雅はこのタイプの相手に対し、ことごとく苦戦してきた。

 しかしこの日は違った。球際の争いで上回ってこぼれ球を回収し、相手の持ち味を封じる。キャプテン菊井悠介は「相手は蹴ってセカンド(ボール)を拾ってから良い展開に繋げていくのを狙っていたと思うけど、ほぼそういう展開はなかった」と話す。

 自陣深くでの守備も集中力を切らさずに完遂した。攻撃はエースのFW浅川隼人が持ち味を存分に発揮して前半に2ゴール。攻守とも噛み合って難敵を寄せ付けず、4試合ぶりの勝ち点3を手中に収めた。
 「セカンドボールは拾えていたし、手数をかけずに攻め切るところで自分たちの形も出ていた。相手が前から来たいところをひっくり返して、チャンスもできていた。内容的にもよかった」。3ボランチの中央で存在感を発揮する米原秀亮は納得の表情を浮かべる。質実剛健な相手に対し、その部分で凌駕しての白星。苦手を克服し、新たな成功体験を得た。

 大切なのはその次だ。一つ勝つことはどのチームにもあり得るが、「勝ち続ける」には確固たる根拠が必要。ましてや松本山雅は第21節を終えた段階で8勝6分7敗(勝ち点30)の9位となっており、後半戦でありったけの勝ち点をかき集めねばJ2昇格は夢幻と消える。
 それを理解しているからこそ、指揮官も「全く満足もしていないし、これでいいとも思っていない。次できなければまた同じことの繰り返しになってしまう」と指摘。DF樋口大輝も「毎回のように『次が大事』と言って、どうしても落としている。もう後半戦。本当にここからが大事なので、最善を尽くしたい」と危機感を募らせる。

 霜田監督が就任した昨季以来、3連勝は1回だけ。2連勝も今季は第21節終了時点で1回となっている。「ハマれば強い」ではなく、「ハマらなくても強い」チームになれるか。青空に北アルプスの稜線が映える夏。真に強い集団となるための鍛錬が続く。