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取り戻したAC長野スタイル    巻き返しへの一歩となるか

不安や高揚、覚悟などさまざまな思いが交錯した第24節宮崎戦。8試合ぶりの勝利を目指したAC長野パルセイロは「長野らしいフットボールを見せられた」という高木理己監督の言葉どおり、選手たちが〝らしさ〟を存分に発揮し、約2カ月ぶりの白星をつかみ取った。

 前節を終えてJ3は3週間の中断期間を挟み、FW浮田健誠は「自分たちを見つめ直す期間だった」。直近4試合でノーゴールだった攻撃の改善に向けて練習を重ねる中、「(シーズンが)始まったころに躍動していた自分たちを思い出そう」(浮田)と、攻守の切り替えや厚みのある攻撃に重点を置いた。「ここで勝ち点を拾えなければ終わり」(DF杉井颯)と覚悟を胸に、積み重ねてきた攻撃的なスタイルを信じて今節を迎えた。

 試合は開始2分、左CKの流れからMF近藤貴司が枠内にミドルシュートを放ち、得点の気配を漂わせた。ただ、その後も決定機は訪れるものの、ゴール前での精度を欠き得点を奪えず、「嫌な雰囲気はあった」とMF西村恭史。前半を0ー0で折り返すと、後半開始早々に一瞬の隙を突かれて先制ゴールを許した。4試合得点がなかったAC長野にとっては痛恨の失点。それでも「練習はやってきた。落ちてしまったら全て崩れてしまう」(MF三田尚希)と選手たちは気持ちを奮い立たせた。

 後半14分、エリア内で浮田が倒されて獲得したPKを近藤が決め、チーム5試合ぶりの得点で同点。西村が「ほっとした」というように、ここから攻撃の勢いはさらに加速した。

 4分後の2点目は得意の速攻から。宮崎の攻撃をはね返したセカンドボールをMF小西陽向が拾い、左サイドの広大なスペースへボールを送ると、三田がクロスを供給。中央に走り込んだ浮田が流し込み、電光石火の逆転劇を完結させた。

 8試合ぶりのゴールを挙げた浮田は後半30分にも追加点を奪い2ゴール。エースとしてチームを8試合ぶりの勝利に導き、「目の前の1プレーをがむしゃらにやっていたら良いことがあると改めて感じた」と表情を緩ませた。
 中断期間中は多くのサポーターが練習の見学に訪れ、選手にエールを送った。MF忽那喬司は「今の僕らの順位やサッカーを見ても『信じているよ』と応援してくれるサポーターがいることを忘れたらいけない」と感謝の思いを口にしていた。信じて待ち続けたサポーターに勝利を届け、西村は「本来の自分たちの力を見せられた」と誇らしげに語った。

 長かったトンネルを抜け、次節は首位大宮に挑む。6月の前回対戦は1ー4で力の差を見せつけられ敗戦。難敵との大一番に向けて、杉井は「どこまで差が縮まったのか楽しみ」。西村はホームで戦う利点にも触れ、「本当に大事な試合になる。サポーターの力も借りて戦いたい」と意気込みを語った。巻き返しへの1歩は踏み出した。この歩みを2歩、3歩と続けていくことが、大逆転でのJ2昇格につながるはずだ。