「やりたいと思った時にできる場所を作ってあげたい」。そう語るのは、ながのサンダーズの代表を務める堀内愛花氏だ。昨年に設立された知的障がい者バレーボールクラブ。県障がい者福祉センター「サンアップル」の登録クラブとして、同施設で活動している。
2028年には長野県で国民スポーツ大会(国体)と全国障害者スポーツ大会が開催予定。そこに向け、サンアップルで指導員を務めるバレーボール経験者の堀内代表が「私に何かできないか」とチームを立ち上げた。「できなかったことができた瞬間はとても感慨深いし、障がいの有無に関係なくみんなが未知の可能性を秘めていると感じる。そのことから『私にできること』を考えたときに、私自身のバレーボール経験が何かの力に繋がると嬉しいと思った」と語る。
結成当初は施設の利用者に声をかけ、初心者を中心に活動。そこに職員らも加わり、最低限の人数で練習を重ねた。高校3年生の鈴木太陽くんはシッティングバレーボールに励んでいたが、堀内代表の誘いを受けて通常のバレーボールにも挑戦。「最初は難しかったが、徐々に慣れていった」と振り返る。
月1回の活動で、競技力向上よりも仲間づくりがメイン。引っ込み思案な鈴木くんだったが、バレーボールを通して周囲の仲間と打ち解けた。その変化はチーム内にとどまらず「学校でも役職を任されたり、率先して意見を言えるようになった」と鈴木くんの母、清子さんは語る。高校卒業後も「ここで続けたい」と意気込み、そのために運転免許の習得という目標も立てている。
もともとはチーム名がなかったが、「モチベーションにつなげてほしい」という堀内氏の考えのもと、メンバー全員で立案。長野県を囲む『山』を由来にサンダーズとした。また、サンアップル(SUN APPLE)の『SUN』を取って、英語表記は『NAGANO SUNDERS』とした。高校生から社会人までが集う、県内唯一の知的障がい者バレーボールクラブ。今後は小中学生など幅広い年代を受け入れていく構えだ。
「大会後に、障がい者スポーツが特別なものでなくなるのが理想。みんなが輪を広げられる場になったり、『何か運動してみたい、スポーツしてみたい』と思ったときに、気軽に足を運べて受け入れられるクラブでありたい」と堀内代表。知的障がい者のスポーツの入口として、小さな輪を少しずつ広げていく。
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サンアップル スポーツ課 堀内
取材・撮影/田中紘夢