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トンネル脱出へ         仲間を信じて恐れずに

もどかしい時期が続いている。藤本主税新監督のもと、11年目のJ3リーグを戦うAC長野パルセイロ。5月30日時点で20チーム中17位に位置しており、昇格争いには絡めていない。それでも獅子たちは苦境を打破しようと、己を信じて突き進んでいる最中だ。
 開幕から5試合で3勝と上々のスタートを切るも、その後は8試合未勝利。とはいえ、この間は連敗が一度しかなく、スコアを見ても僅差が多い。内容も悲観するものではないが、結果からすれば勝ちきれない――まさにもどかしい時期である。
 5月中旬には、松本山雅FCとの信州ダービー2連戦を迎えた。県選手権決勝、リーグ第5節と中2日で続く大一番。いずれも敵地のサンプロ アルウィンに乗り込んだ。〝前哨戦〟となった県選手権決勝で0―1と敗れると、藤本監督は3日後のリーグ戦を「リベンジマッチ」と位置づけ、選手たちも目の色を変えた。

 試合は21分、ゲームキャプテンの三田尚希が先制点を奪う。左サイドでの軽快なコンビネーションから、中央を経由して右サイドへ。安藤一哉のクロスから最後は三田のヘディング。左で作り、右から仕留める――チームとして得意とする形だ。

 しかし、後半立ち上がりにまさかの連続失点。会場も巻き込んだ相手の圧に呑まれ、逆転を許してしまう。その後も押し込まれる展開が続いたが、ライバルに2度も敗れるわけにはいかない。終了間際の85分、忽那喬司のCKを古賀俊太郎が頭で決め2―2のドローに持ち込んだ。リベンジは果たせなかったものの、なんとか意地は見せた。

 ここまでは得点力不足に苦しんできたが、8試合ぶりの複数得点。アシストした左ウイングバックの忽那、右ウイングバックの安藤によるサイド攻撃をはじめ、チームとしてボールを保持しながら形は作れている。あとは自分たちの時間を増やしつつ、ゴール前での精度を高められるか。昨季13ゴールを挙げたエース・浮田健誠の覚醒にも期待したい。


 8試合未勝利が続く中でも、「新しいことというよりも、いま積み上げているものの精度とか成功回数を増やせるようにやっていくしかない」と指揮官。選手たちからしてもスタイルに疑いはなく、むしろ練習から楽しんでいる様子がうかがえる。
 6月はアウェイのガイナーレ鳥取戦から始まり、下旬には四国での2連戦。過酷なロングアウェイが続く中でも、己を信じ、仲間を信じて突き進めるか。7月からの後半戦に向けて、巻き返しを図りたいところだ。
取材/田中紘夢