「連勝できないこと、良い内容のゲームが続けられないこと。そこには大きな責任がある」
0-2と敗れたJ3リーグ第32節・奈良クラブ戦。今季初の連勝に向けて8度目のチャレンジに失敗し、藤本主税監督は結果を重く受け止めた。
J3残留を目指すAC長野パルセイロ。第31節のカマタマーレ讃岐戦で1-0と競り勝ち、残留争い直接対決を制した。17位の長野に対し、讃岐は勝ち点1差の19位。負ければ順位をひっくり返される状況で、前半に挙げた1点を守り抜いた。
その勢いを繋げたかった奈良戦だが、思わぬ結果が待っていた。前後半に1点ずつを奪われ、0-2と敗戦。8試合ぶりの無得点に終わり、それどころかシュートを1本も打てなかった。
プロ野球界では、一度も出塁を許さない「完全試合」がある。直近では千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希(現ロサンゼルス・ドジャース)が2022年に達成し、28年ぶりの快挙となった。80年を超える歴史において、16人しか達成していない偉業だ。
サッカーのシュート0本も呼称こそないが、極めて稀な現象と言える。Jリーグ33年の歴史において9例目。参入12年目のAC長野が、不名誉な記録を作ってしまった。



ボールを保持できてもサイドに揺さぶるばかりで、一向に突破口が見つからない。頼みの綱である右ウイングバックの安藤一哉も、荒れたピッチに苦戦を強いられ、ドリブルで突破してもクロスの精度が上がらなかった。
「監督は『チャレンジしてのミスは全然いい』と言ってくれている。だからといって全部が全部チャレンジすればいいわけではないけど、一つ無理をするとか、欲を出すところを意識しないと、なかなか停滞した状況は変えられない」
安藤が言うように、今季はリスクを冒したチャレンジが少ない。讃岐戦もシュート数は2本にとどまり、安藤のクロスから生まれたオウンゴールで辛勝。奈良戦はシュート数が0本と、リーグ最少の得点力を表すような結果が続いた。



今季は白星の後に黒星が並び、終盤戦に差し掛かっても連勝がない。冒頭の指揮官の言葉どおり、「良い内容のゲームが続けられない」ことによって、残留争いに巻き込まれている。
サッカーは得点を競うスポーツ。得点を奪うためには、シュートを打たなければならない。シュートを打つためには、ゴール前にボールを供給しなければならない。勇猛果敢にゴールへ向かう姿こそが、群雄割拠のリーグで生き残るカギとなる。

取材/田中紘夢
