体育館の天井に、中学生たちの弾けるようなコールと力強いボールのバウンド音が小気味よく反響する。失敗を恐れずに何度もゴールへ果敢にアタックする子どもたちと、その挑戦を笑顔でたたえながら、具体的かつ丁寧に語りかける指導者たち。安曇野市を中心に近隣地域から中学生が集まるU15バスケットボールクラブ「PHOENIX GUNS(フェニックスガンズ)」の練習風景だ。部活動の地域移行が進む昨今、子どもたちが変わらず大好きな競技に打ち込める場を守るため、クラブは2021年4月に産声を上げた。

現在、クラブには全体で38名が所属している。メンバーの内訳は学年や能力によってAチームとBチームに分け、個々の状況に合わせた工夫を凝らし、1年生だけで大会に出場する機会を作るなど、誰もが主役になれる場を模索している。これはクラブに入ったばかりの1年生をいきなりハイレベルな試合に連れて行っても負担が大きく、出場機会が得られなければ競技の面白さを損ねてしまうという配慮からだ。また、競技初心者への門戸を広く開けているのも特徴で、現在も中学校に入ってから競技を始めたというメンバーが5名在籍している。

2025年には「選手権中南信大会」で5位に食い込み、県大会ベスト16という足跡も残した。今年のチームについて栗林洋介コーチは「これまでの5年間で一番競技力は控えめかもしれない」と微笑むが、選手たち自身もそれを自覚しているからこそ、日々の練習に向き合う姿勢はとても実直だ。キャプテンを務める佐々木斗琶も「上手さではなく、ミスをしたらすぐ戻るなど、気持ち一つで誰でもできる泥臭いところを頑張るのが自分たちの持ち味」と語る。そんなチームが今、合言葉に掲げているのが「化ける夏」だ。学校が休みになるこの期間、特に脚力をつけるメニューを多く取り入れ、運動量を増やすきついトレーニングに励んでいる。今のチームはその過酷なメニューをみんなで明るく、楽しくやれる強さがある。「競技力が未熟だからこそ、誰かのシュートが落ちるかもしれないと思って別の誰かが全力でフォローに走る。それがチームとしての強みに変わる」と栗林コーチが語る通り、日々のゲームからは確かな成長と、「化ける夏」の扉が開きつつある手応えが聞こえてくる。


指導するプレースタイルも個の育成に特化している。プロでも万国共通で使われるスクリーン戦術をあえてやらない「ノーピック」を掲げ、「一人の力でペイントエリアにボールを運べば、『リングにボールを入れる』というバスケットボールの目的は半分終わっている。そこにボールが入れば相手のディフェンスは必ず崩れる」という原理原則を丁寧に説いている。だからこそ、卒団したOBたちは進学先の高校でピックに頼らずに自分の力で縦へ切り込んでいく選手として活躍している。チームには夏での引退がなく、3月の最終週に開かれる卒団式まで全員で成長を続け、次の代へ送ることも大きな特徴だ。
栗林コーチが指導の中で最も大切にするのは、挨拶などの礼儀だ。「周りから愛される、いい人間になってほしい」という願いがある。コートの中で学ぶ「チームのために」という考え方は、一歩コートを離れたこれからの人生においても、子どもたちを支える大切な財産となっていく。

【キャプテン 佐々木斗琶 さん】
キャプテンになり、まとめる力や積極性がつきました。ミスをしても全員でカバーし合える泥臭さが僕たちの強みです。10月の選手権大会では、これまで負けているライバルに勝てるように頑張ります!

【コーチ 栗林洋介 さん】
勝ち負け以上に、卒団を迎える3月まで一人ひとりの個性をじっくりと伸ばしてあげることを一番に考えています。子どもたちが日々成長していく姿を指導者の特等席で見られることが、今の私の最高の幸せです。

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取材・撮影/児玉さつき
