地域スポーツ

【MKーU12】          自ら考え判断する力を育てる

2024年4月、松本市内のミニバスチームの減少を受けて誕生したバスケットボールクラブチームMKーU12。「バスケットボールを続けられる場を提供したい」という思いから始まったクラブは、『単なる競技の場』を超えた教育の場となっている。
 指導を担うのは、元小中学校教員で現在は松本国際中学校で数学を教える村澤広基コーチ。「バスケットボールに取り組んだ経験が子どもたちの生きる力につながり、将来の役に立ってほしい」という理念のもと、独自の指導方針を貫く。
 「数学を学ぶ意義は、論理的思考を養い、将来の問題解決に生かすこと。バスケットも同じ」と村澤コーチは語る。試合でも練習でも、コーチが細かく指示を出して動かすのではなく、子どもたち自身の判断を重視する。


 例えば、マークマンの選択も子どもたちに委ねる。「指導者としての想定はあるけれど、それが本当に正解かは分からない。子どもたちの判断に任せて、うまくいかなかった場合は、うまくいくように練習するのが指導者の役目」と考える。
 その方針は着実に成果を上げている。メンバーの一人・小学6年生の若月瑞希は「村澤コーチは自分で考えること、自立する力を求めている」と感じており、昨年末にコーチが体調不良で同行できなかった試合でも、動揺することなく臨めたという。
 練習は火・木・金曜の平日と土日の5日間を基本とするが、参加日数も子どもたちの判断に任せる。「他の習い事のスケジュールなどを加味しながら自分で決めてほしい」という方針だ。
 さらに金曜夜には未就学児向けのキッズコースも開催。「運動を始めるのは早ければ早いほど良い」という考えから、バスケットに限らず、運動を始めるきっかけづくりの場を提供している。


 発足時8人だったメンバーは現在、19人に増加。「リーグ戦のB登録チームに20点差をつけて勝てるようになる」という当初の目標に向かって着実に力をつけ、「20点差には満たないものの、どのチームにも勝てる力は身についてきた」と村澤コーチは手応えを感じている。
 県U12選手権や第7回しんきん&テレビ松本優勝旗争奪大会など、各種大会での経験も重ねながら、子どもたちは競技力とともに、自ら考え判断する力を着実に育んでいる。


【村澤広基 コーチ】
バスケットボールの競技人口を増やしたいという思いはもちろんありますが、キッズコースではバスケットボールに限らず、何かしらのスポーツに取り組みたいと願っている子どもたちにとって、気軽に運動を始められる場を提供できればと考えています。


【若月瑞希 さん(小学6年生)】
バスケットボールは母の影響で興味を持ち、やってみたいと思うようになりました。今シーズンの活動では、今まで勝てなかったチームに点差をつけて勝てたことがとても嬉しかったし、達成感がありました。中学に進学してもバスケットボールを続けたいと思います。

取材・撮影/児玉さつき