「好きなことを本気でやってほしい。本気でやっていれば、選手としても人間としてもいつか本物になる」
サッカーのジュニアユース(中学生年代)で県内の古豪・FC ASA FUTURO。立澤恵一総監督は「本気でやらないのは、やらせてくれている親にもサッカーにも失礼」とひたむきな姿勢を要求する。選手もそれに応え、一志暖主将は「キツい言い方だけど、やる気がない人は続かない。最低限の条件として『サッカーを本気でやりたい』という熱量がないと」と力を込める。
1999年のチーム創設から25年目。「部活動のみにとどまらず、地域にもハイレベルな育成環境を」というのが発足の経緯だった。それから25年が経ち、ジュニアユース年代を取り巻く環境は大きく変化した。松本山雅FCユースアカデミーを筆頭に強豪チームが出現しただけでなく、部活動の地域移行化やサッカー人気の高まりも追い風としてクラブチームが増加。スキルアップを願う子どもたちの選択肢を増やすと同時に、才能が分散しやすい状況も生んでいる。
その中でもハイレベルな環境を求めて選手が集まるが、徐々に変化もあるという。立澤監督は「以前は教えていないことまで積極的にやる選手ばかりだったが、今はそういう時代ではない。昨今は言いっ放しにせず『何のためにやるのか』を問いかけている」と、自発性を促す指導に心を砕く。ただ、「上手くすることも大事だが、『強く』する。どこでやろうが本気でやらないと。上手い下手ではない」と根底にある思いは不変だ。
県クラブユース連盟に所属し、かつては県内屈指の強豪として北信越リーグでも名を馳せた。OBとして、プロフェッショナルレフェリーの淺田武士さんやフットサルFリーグ2部・ボアルース長野の中村亮太などを輩出。チーム指導スタッフにも3名のOBが所属し、「自分たちが学んだことを世代を超えて伝えていきたい」と、情熱を持って臨んでいる。
昨季Uー15チームの成績は県リーグ1部4位に留まったものの、松商学園や都市大塩尻、松本県ケ丘などの県内強豪校へ進学する選手は現在も後を絶たない。「トップレベルの才能が集まりづらくとも、どこまで育てていけるか。どう『強く』するか、を続けていきたい。あるいは最初から輝いていたとしても、徐々にくすんでくる場合もある。彼らの輝きを失わせず、より光らせるにはどうするか」。取り巻く環境が変わっても、本気を求めるスタンスは揺るがない。熱い志を「強さ」に変える源流は、変わらずに流れ続けている。
【(左から)戸澤 咲介さん、一志 暖さん、長巾 虎大朗さん】
【立澤 恵一監督】
取材・撮影/佐藤春香