初心者も選抜選手も、同じコートで汗を流す。松本市を拠点に活動するバスケットボールクラブS.B.C.が、新しい風を吹き込んでいる。2022年8月の発足から3年目を迎え、U15男女と小学生を合わせた所属選手は約50人。松本第一高校など3つの体育館を確保し、ほぼ毎日練習できる環境を整えた。

S.B.C.の特徴の一つは、競技レベルの異なる選手が共存するチームカルチャーにある。「強い選手だけを集めてやっているチームではない。いろいろな選手がちゃんと成長できる環境があることで、お互いがリスペクトし合える文化ができた」と篠田隆史コーチ。選手の自立を促す指導方針のもと、練習メニューを選手自身が話し合って組み立てる場面も日常の風景だ。

その環境が変えたものは少なくない。他のチームでバスケを嫌いになりかけていた選手が再び競技に情熱を注ぐようになったり、スポーツ未経験の初心者が選抜選手に成長したり。U15女子のある選手は「両手シュートからワンハンドシュートに変えてプレーの幅が広がった。小学校のときはコート上で話すことが苦手だったけれど、自分からコミュニケーションを取れるようになった」と変化を口にする。篠田コーチは「バスケットボールを通して人としての成長を目指す考えが根底にずっとある。それが自分の想像した以上に、すごくいいものになってきた」と手応えを語る。

妻の悠里絵コーチと中心になって、U15男女とU12男女の計4カテゴリを指導する。隆史コーチは茨城県の強豪・つくば秀英高出身で、同期にはBリーグで活躍する選手も。松本第一高校に勤務しつつ、県外で培った指導メソッドとネットワークを松本平に持ち込んだ。悠里絵コーチも人脈を生かし、千葉ジェッツ元ヘッドコーチのジョン・パトリック氏を招いたクリニックを実施するなど、トップレベルの知見に触れる機会を選手たちに提供している。

コーチ 篠田悠里絵さん
現状に対する危機感も活動の原動力だ。「中信のバスケ人口が少なくなっているし、熱量ももっと高められる」と隆史コーチ。さらに松本市出身で大学のトップレベルやBリーグで活躍している絈野夏海(東京医療保健大)、田口翔(東京八王子ビートレインズ)を例に挙げ「もっと頑張りたい子がいるし、環境ができればすぐ伸びる子もこの地域にはいる。すごく可能性を感じている」と力説する。
裾野を広げつつ、ピラミッドの頂点を引き上げる両輪の試み。ミニバスや部活動の選手も参加できるスクールを併設し、バスケットボールとの接点を広げている。地域に眠る「原石」を磨き、輝かせる場所であり続けること――。その覚悟が、コート上の声量に表れている。

【コーチ 篠田隆史 さん】
中信地区のバスケを取り巻く環境が厳しくなっていく中で、自分たちだけが良ければいいのではなく、みんなでこの地域をしっかり作っていきたい。バスケットを通して、成長したいという子どもたちをしっかり支えて、良いものを伸ばしてあげたい。

【U15男子 中沢彪人 さん(中学3年生)】
最初入ったときは内気だったけれど、今は自分からみんなを盛り上げられるように成長できた。バスケはチームスポーツだからこそ、良いプレーも悪いプレーもみんなで共有できる。見ている人が応援したくなる選手になりたい。

【U15女子 澤渡千月 さん(中学3年生)】
コーチの教え方も、一つ一つのプレーに対しての本気さも他のチームとは違う。県外遠征で自分の良さを痛感できたし、フィジカルもメンタルも強くなった。ジュニアウインターカップでしっかり結果を残して、全力を出し切りたい。

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取材・撮影/大枝令
