コートを駆けるバッシュの音と、ゴールネットが揺れる快音。
池田町を拠点とする女子ミニバスケットボールチーム「MUSE(ミューズ)池田」の練習場には、子どもたちの快活な声が響いている。

チームの原点は2002年にさかのぼる。学校の週休2日制が始まったことをきっかけに、「子どもたちの健やかな居場所をつくりたい」という創設者の思いから誕生した。2026年には、中学年代のクラブチーム「MUSE」と理念を共有するため名称を改称。安曇野市北部や大町市など、広い地域の子どもたちの受け皿になりたいという願いの通り、現在19名いるメンバーの半数以上は池田町外から集まっている。地域を越えてバスケットボールを楽しむ仲間が増えたことが、今のチームの活力だ。

MUSE池田の特徴の一つは、創設時からの「居場所づくり」という視点を引き継いだ、家庭の暮らしに配慮した運営方針にある。練習は水曜と土曜の週2回が基本だ。日曜は家族との時間を大切にするために休みとし、宿泊を伴う遠征も原則として行わない。保護者の当番負担を最小限に抑え、ウェアの購入も強制しない。「お金をかけすぎず、負担を少なく」という方針が、スポーツを日常の中で無理なく続けられる環境をつくっている。
活動日数は限られているが、中信地区で2年連続上位に進出するなど、実力も着実に高めてきた。一昨年は3位、昨年は2位という結果を残してきた「しんきん&テレビ松本優勝旗争奪大会」で、今シーズンこそは優勝したいという目標も、選手たちの間で自然と共有されている。Wリーグで活躍した永澤果歩選手を輩出した歴史もあり、競技を長く楽しむための土台づくりがここにはある。

指導にあたる宮坂明史コーチは、選手との対等な関係を大切にしている。子どもたちはコーチを親しみを込めて「宮坂さん」と呼び、練習メニューについても「今日はここを重点的にやりたい」と自分たちで提案することがある。宮坂コーチが願うのは、バスケの技術向上だけではない。「バスケだけでなく、勉強や他の習い事も大切にして、学生として成長してほしい」という言葉通り、選手たちの多くはサッカーやピアノ、書道など、さまざまな活動とバスケを両立させている。キャプテンの柏原有希は「助け合えるチームにしたい」と語り、副キャプテンの中沢嘉穂は「自分で判断してシュートを打てるようになった」と自身の変化を実感している。 自分で考え、判断し、主体的に動く力。MUSE池田が育んでいるのは、コートの上だけにとどまらない、健やかな成長の糧だ。日々の練習や試合という挑戦を楽しみながら、一人ひとりの個性と暮らしを何より大切にする。「無理なく、自分らしく」。そんなMUSE池田のスタイルが、これからも子どもたちの笑顔と、まっすぐな成長を力強く支えていく。

【コーチ 宮坂明史 さん】
バスケに正解はありません。だからこそ「今のプレーはどうすれば良かったかな?」と問いかけ、子どもたち自身に次の選択肢を考えてもらうよう意識しています。教え込まれるのではなく、自分で判断する楽しさを知ってほしいです。

【キャプテン 柏原有希 さん】
友だちの影響で1年生から始め、コツコツ練習を続けて今はディフェンスが一番の特技です。試合では誰よりも大きな声を出して、みんなを元気づけられるように意識しています。強みである「守りから攻めへの切り替え」を武器に、強い相手にも勝てるチームを目指します!

【副キャプテン 中沢嘉穂 さん】
1年生からバスケットボールを始め、今は得意のシュートに自信があります。コーチの助言のおかげで、チャンスを自分で判断してシュートを打てるようになりました。将来の夢は町田瑠唯選手が所属している富士通レッドウェーブに入ることです。

取材・撮影/児玉さつき
