地域スポーツ

【飯島柔道クラブ】        半世紀の歴史と情熱

未就学児から一般までが同じ道場に集い、柔道の稽古に汗を流す。時に真剣な表情を緩ませて笑顔を交わす姿に、競技に打ち込むことへの楽しさが伝わってくる。

 飯島柔道クラブの発足は1971年。「飯島町にも柔道ができる環境を」と故上原春男氏が設立し、現在は次男の上原正義氏が代表を務める。同クラブで柔道に励み、高校ではインターハイ出場経験もある上原代表だが「試合の勝敗は二の次。まずは柔道が好きになってもらいたい、強くなるのはそれからでいい」と思いを語る。
 クラブOBで現在は指導者として携わる有賀克伸氏も「サッカーや野球、ダンスなどと並行して通っている子も多い。まずは柔道を楽しいと感じてもらいながら、他のスポーツにもつながる体づくりを行っていきたい」と広い視野で指導に臨む。
 道場には約20人の生徒が通うが、その大半が同クラブ出身者の子どもや孫の世代だという。これは長年続けてきた「楽しさを伝える」指導の賜物なのかもしれない。

 「辛い時でも逃げ出さない、とにかく自分を強くしてくれたものが柔道だと思っている」と上原代表。練習では、ブリッジやV字腹筋、バーピージャンプ、腕立て伏せ、反復横跳びといった一連の動作を各10秒ずつ行うサーキットメニューを取り入れる。「きつい」と言葉を漏らしながらも、懸命に取り組む子どもたちの姿が印象的だ。

 その後の乱取りでも、受け身の上達や技の向上を目指して試行錯誤を繰り返す。こうした努力は着実に強さにも結びつき、小学3年生の有賀雷眞くんは昨年5月の第29回南信少年少女柔道チャンピオン大会で3位入賞し、県大会に出場。「相手よりも多く技を出し、もっと積極的に攻めたい。目標は自分の得意な技をきれいに決めること」と自らの課題を見つけ、精神的にも大きく成長した。

 柔道を通して上原代表が子どもたちに願うのは「良い子で素直に育ってほしい。呼ばれたら気持ちの良い返事ができる、当たり前のことが当たり前にできるような大人になってもらいたい」ということ。体いっぱいにやる気を漲らせ、大人相手の乱取りにも果敢に挑む5歳の上原詩さんをはじめ、稽古中も道場のいたるところから、はつらつとした掛け声が響く。
 半世紀以上の歴史を持ち、飯島町に根付いた飯島柔道クラブ。「柔道を好きになり、人としても成長してほしい」との願いは脈々と受け継がれ、今日も子どもたちの成長を支え続けている。

【年長 上原詩 さん】

小さい頃からお父さんと一緒に道場に行き、クラブの練習を見ていたので、楽しそうだと思って今年の4月から始めました。得意な技は背負い投げです。一生懸命練習をして、技を上手に決められるように頑張ります!

【小学4年生 有賀雷眞 くん】

お父さんに勧められて、5歳から始めました。練習は時には辛いと感じることもありますが、乱取りで投げたり、上手く受け身が取れたりするとうれしいし、みんなと一緒に柔道をやることが楽しいです。中学生でも続けたいと思っています。

取材・撮影/児玉さつき