土曜日の午前中、グラウンドにはじける元気な声と、小気味よい白球の音が響き渡る。松本市の鎌田小学校を中心に、近隣の小学校から集まった24人の少年少女たち。彼らが所属する「鎌田少年野球団」は、20年以上の歴史を誇るチームだ。

チームの始まりは、地域の大人が抱いた純粋な願い。当時、鎌田小学校には子どもたちが野球をできる環境がなかった。そこで「子どもたちに野球をさせたい」と考えた地元の早起き野球のメンバーたちが、同じく野球仲間であった鎌倉弘行会長に「チームを作ってほしい」と声を掛け、指導を依頼したことが創設のきっかけとなった。中学校の教員として長年野球部を指導してきた実績を持つ鎌倉会長は、彼らの熱い思いに応える形で創設メンバーとなり、地域の仲間とともにチームを大切に育て上げてきた。
長い歴史のなかで、チームは確かな足跡を残してきた。2025年11月には、デーブ大久保杯のAブロックで優勝、昨シーズン最後の大会となったデラウェアカップでも見事優勝を果たした。そんな先輩たちの背中を見て育った現在のメンバーもまた、その誇りを胸に日々の活動へと打ち込んでいる。
鎌田少年野球団の大きな特色は、子どもたちと家庭に寄り添った独自の活動スタイルにある。練習は土曜日の午前中のみ。午後と日曜日は、あえて活動を入れない。「子どもたちの集中力は長く続かないため、限られた時間で中身の濃い練習を積む」という指導上の配慮に加え、その根底には「週末の後半は家族との時間を何より大切にしてほしい」という温かい思いが込められている。
練習では、しっかり走り込んで体をつくった後、技術の土台作りに力を注ぐ。現在チームが特に重視しているのが、捕ってから投げるまでの流れを意識した「ボール回し」だ。個々の技術をバラバラの「点」にするのではなく、一連の動作という「線」でつなげて身に付ける。

今季、チームは4月に「Gas Oneカップ」、5月に「市民タイムス旗」という2つの公式戦に挑んだ。結果は思うようには届かなかった。しかし、グラウンドに流した悔し涙は、選手たちの心に火をつけた。「まずは公式戦で1勝を挙げたい」。キャプテンの松嵜香樹は「試合で活躍して勝利をつかみたい」と力強く前を向き、副キャプテンの中野朔帆も「負けて悔しかった気持ちを忘れず、もっと上手くなりたい」と次の試合を見据える。
現在指揮を執る三澤崇夫監督は自身の経験から、中学や高校のステージでも通用する「基礎づくり」を最優先に掲げる。そして、楽しく野球を続けるなかで、「一生の財産となるような良い仲間と出会ってほしい」と思いを込める。

一方で、創設から見守り続ける鎌倉弘行会長は「強い人間になってほしい」という願いを持つ。子どもたちには、野球に全力で打ち込む経験を通じて、心と体の本当の強さを身に付けてほしいと考える。ここで学ぶのは、困難に立ち向かう折れない心と、仲間を思いやる優しい気持ちだ。勝つ喜びも、負ける悔しさも、すべては人間としての成長の糧となる。地域に根ざし、子どもたちの成長を支え続ける鎌田少年野球団。大好きな野球を楽しむ子どもたちの笑顔と挑戦は、これからもこのグラウンドで輝き続ける。

【監督 三澤崇夫 さん】※写真左)松嵜嘉孝コーチ、右)三澤崇夫監督
小学生のうちは勝敗だけにとらわれず、まずは野球の楽しさを知ってほしいと思っています。ここで基礎をしっかり固めて、中学、高校でも野球を続けたいと思える土台をつくっていきたいと考えています。
松嵜嘉孝コーチ、右)三澤崇夫監督.jpg)
【キャプテン 松嵜香樹くん】
かっこいいプレーができた時に野球の楽しさを感じます。キャプテンとして試合で活躍し、まずは1勝をつかみたいです。将来はプロ野球選手になることが夢です。

【副キャプテン 中野朔帆 くん】
悔しい負けを経験したことで気持ちが引き締まりました。ピッチャーとしても打者としても試合で活躍し、チームの勝利に貢献したいです。目標はまず1勝することです。

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取材・撮影/児玉さつき
