金メダリストが誕生した道場で、後輩たちは今も活気にあふれた練習に打ち込む。今年7月、パリ五輪柔道女子57kg級で出口クリスタが金メダル。3歳から柔道を学んだのは誠心館道場だ。2代目の村山洸介館長は、「出口クリスタを目標にしてもいい。あの先輩みたいになりたい、そういう場所にしていきたい」と語る。
「おねがいします!」。凛とした挨拶が道場に響く。年少から中学3年生まで50人以上が学ぶ道場。出口の金メダルは、後進たちの大きな励みでもある。7月の県中学総体は男子団体が優勝、女子団体も準優勝して全国切符を手にした。
村山館長が指導の柱とするのは、柔道の創始者・嘉納治五郎が説く「精力善用」と「自他共栄」の精神だ。「柔道は道であり、術ではない。人に勝つための術を練習することから入って、道に至るまでが柔道。道に至る上でどのように人の役に立つか、それが柔道の一番の目的」
その実現に向け、館長が重視するのは具体的な目標設定。「『強くなりたい』という漠然とした目標ではなく、『強いとはどういうことか』を考え、理想とする強さにモデルとなる人を見つける。今はネットの動画などでトップ選手の活躍を見ることができる。ロールモデルの真似をすればいい。ゴールが高い分、子どもたちは自然と強くなっていく」と話す。
中学2年生の原山快音は、今年の県中学総体で個人戦準優勝。「来年は絶対に勝ちたい」と気概を示す。小学6年生の林響葵は県少年少女チャンピオン大会県大会65kg級で優勝し、全国大会出場を決めた。「今年は決勝トーナメントに進出したい」と意気込む。
道場では日々、真剣な稽古が続く。中学生の凛とした姿を目標に小学生が励み、その小学生の姿に幼い子どもたちが憧れを抱く。そして道場の先輩・出口クリスタという大きな背中を追う。「誰よりも柔道を上手く教えられるようになること」。それが村山館長の目標。金メダリストを育てた道場から、次の夢が育ちつつある。
【左/ キャプテン 原山 快音 さん 中学2年生】
県中大では団体戦で優勝し、全国大会へ出場しましたが、個人戦では準優勝となり、とても悔しかったです。大会後はトレーニングの量を増やし、来年は団体戦だけでなく、個人戦でも優勝することが目標です。
【中央/ 林響 葵 さん 小学6年生】
今年の第29回長野県少年少女柔道チャンピオン大会県大会65kg級で優勝し、全国大会へ出場します。昨年は決勝トーナメントにいけなかったので、今年は2回のリーグ戦を突破し、決勝トーナメントに進出したいです。
【右/ 竹田 柚月 さん 小学6年生】
柔道では挨拶などの礼儀も教えてもらい、普段の生活でも実践しています。昨年の長野県少年少女柔道チャンピオン大会県大会は1回戦敗退でしたが、今年は準優勝することができたので、来年は優勝したいです。
取材・撮影/児玉さつき