初霜が降り、肌寒さが増した11月。霧の晴れた青空の下、松本市の一角で子どもたちの元気な声が響く。1987年に発足した菅野サッカースポーツ少年団の朝の風景だ。
現代表の上條英俊は、このチームの前身であるヤマガジュニアサッカースクールで自身のサッカー人生をスタートさせた。指導者として20年以上。代表就任から4シーズン目を迎える今、独自の指導哲学を築き上げている。
「否定しないこと」。それが上條代表の掲げる指導方針だ。「一口にパスからのシュートと言っても、パスをそのままシュートする場合と、トラップしてからシュートを打つ場合がある。たとえシュートが決まらなくても、子どもの選択を否定せず尊重し、次に生かせるように促している」。この考えは、他の指導者との関わりや指導者資格取得に向けた勉強から培われた。
チームの特徴は指導体制の充実ぶりにある。上條代表を含め、指導に当たる全コーチが日本サッカー協会の公認C級の指導資格を保持。桑折裕希、山田隼也の両コーチが2〜4年生を、羽山紀彦コーチが5年生を担当する体制で、きめ細かな指導を実現している。
少子化の影響で団員確保に課題を抱える中、チームは柔軟な解決策を見出した。今シーズンから5年生チームは明善サッカースポーツ少年団と合同で「M・S United」を結成。子どもたちの活動機会を確保している。
「まとまりがあることがチームの強み。個々に意見は発信するけれど、相手の思いを尊重し、調整することができる」と上條代表。3年生以下チームのキャプテン浅田磨希も「チームのメンバーと声を掛け合いながらプレーをすることが楽しい」と語る。「M・S United」のキャプテン中山颯人も「チームの優勝や、仲間が点を決めた時に喜びを分かち合えることがサッカーの楽しさ」と笑顔を見せる。
今シーズン、3年生以下チームは9月の第35回てまり杯2位リーグで優勝。その勢いを駆って、浅田キャプテンは「11月のエラン杯では去年の4位を上回りたい」と意気込む。中山キャプテンも「市民タイムス杯での優勝」を目標に掲げ、チーム一丸となって今シーズン最後のタイトルを目指している。
グラウンドでは今日も「いち、に、さん、し」という快活な声が響く。子どもたちの可能性を否定せず、個性を伸ばしていく。その姿勢が、チームの着実な成長を支えている。
【3年生チーム キャプテン 浅田 磨希 くん】
ロナウジーニョやハーランドに憧れてサッカーを始めました。練習日以外はボールタッチやトラップ練習など自主トレーニングもしています。将来は憧れの選手を超えるようなプロのサッカー選手になりたいです。
M・S United(5年生合同チーム)
【キャプテン 中山 颯人 くん】
友達に誘われたことがきっかけで、小学2年生からサッカーを始めました。キャプテンとして、チームのメンバーが失点して落ち込んでいる時に、プラスの声掛けでチームの士気を上げられるように意識しています。
【明善サッカースポーツ少年団との5年生合同チーム「M・S United」】
【上條 英俊 代表】
取材・撮影/児玉さつき
※11月9日取材