地域スポーツ

【煌士会柔道教室】              「一本」に込める           強さと優しさ

畳を叩く乾いた音と、道場に響き渡る真っ直ぐな気合。柔道着に身を包んだ子どもたちの瞳には、一勝を目指すひたむきさと、自分を磨こうとする純粋な意志が宿る。

 2020年6月、わずか5人で産声を上げた「煌士会(こうしかい)柔道教室」。今や伊那市や南箕輪村、箕輪町などから34名が集う、地域に根ざした武道の拠点だ。この教室が何より大切にするのは「一本を取りにいく柔道」。ただポイントを稼ぐのではない。相手を鮮やかに投げ、決め切る。柔道本来の醍醐味を追求する姿勢は、全国少年柔道大会長野県予選での「ベスト一本賞」3年連続受賞という形で見事に証明された。同時に、礼儀正しさを評価する「ベストマナー賞」も受賞。技術の研鑽と同じ重さで、立ち居振る舞いを重んじる精神がそこにある。


 強さを支えるのは、週4日の密度の濃い稽古だ。最初の30分、全身を自在に動かせるよう多様な身体動作を取り入れたトレーニングを行い、スムーズな技の習得へと繋げていくのが特徴だ。だが、大西誠代表が指導の根底に置くのは、単なる強さではない。「礼や挨拶の徹底。相手の痛みを知り、人に優しくなれる人間になってほしい」。保育園児から中学生までが同じ畳の上で汗を流し、上級生が下級生を導く。その積み重ねが、教室の温かな空気をつくっている。

 子どもたちは、畳の上で己の壁を乗り越えていく。塾生の朝倉悠は、昨年の県大会の決勝で、自分の力を発揮できないまま負けてしまった相手がいた。しかし今年3月の団体戦、その相手と再戦し、一歩も引かない熱戦を繰り広げた。「精一杯、力を出し切れていたよ」。大西代表のその言葉は、朝倉にとって何よりの勲章となり、「自分も通用するんだ」という確かな自信へと変わった。昨年、初めて県大会に挑んだ白鳥天花も、「負けたらどうしよう」と不安で体は硬くなっていた。しかし、審判の「はじめ!」の合図と同時に、仲間たちの一斉の声援が響く。「頑張れー!」。その声に勇気をもらった彼女は見事に勝ち進み、初出場ながら準決勝へ進出。その準決勝で敗れ、悔しさで涙が止まらなかった彼女に、大西代表は「3位は本当にすごいことなんだよ」と優しく語りかけた。その言葉に悔し涙はやがて「もっと強くなりたい」という次なる意欲へと繋がったという。
 2025年は各大会で躍進。第30回長野県少年少女柔道チャンピオン大会・第34回(公社)長野県柔道整復師会少年柔道大会の小学5年生重量級での速水來士の優勝をはじめ、多くの入賞者を輩出した。中学生も北信越大会に4人が出場し、男子90キロ級では唐澤琉空選手が3位に入る活躍を見せた。2026年3月には自ら「第1回伊那谷杯柔道大会」を主催。約500人が参加する南信屈指の規模の大会を成功させたのは、教室の新たな挑戦だ。「大会は自分を試す場。勝敗以上に、そこまでにどれだけ努力したかが大切」と大西代表は説く。一本を目指す真っ直ぐな柔道と、一人ひとりの成長を慈しむまなざし。煌士会柔道教室は、これからも地域の子どもたちの心と体を、力強く、そして温かく鍛え上げていく。

【代表 大西誠 さん】
週4日の厳しい稽古を乗り越える経験は、子どもたちの自信へと変わります。大舞台で一人戦う子どもたちの肝の据わり方は、目を見張るものがあります。子どもたちが成長し続ける姿に私自身も勇気をもらい、共に歩んでいます。

【中学1年生 白鳥天花 さん】
友達に誘われて始めた柔道ですが、初めて出場した県大会で3位になれたことが自信になりました。以前はすぐ泣いてしまう性格でしたが、今は心の強さも身につきました。中学生として、小学生から憧れられる先輩を目指します。

【小学6年生 朝倉悠 くん】
去年の県大会は準優勝で、決勝で負けた相手と団体戦でしっかり戦えた時は、自分の成長を感じて嬉しかったです。6年生は強い人が多い階級だけど、得意の足技をもっと練習して、全国大会に出られるように頑張ります!

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取材・撮影/児玉さつき