地域スポーツ

【松本SEEKERS】       「なぜ?」を突き詰めて     成長につなげる

練習開始前の松本市岡田小体育館。指示を受けるまでもなく、子どもたちが自主的にモップを手に取って床そうじを始める。バスケットボールの技術だけでなく、日常の場面でも「自主性を発揮できるチーム」を目指す指導の成果が表れている光景だ。
 松本バスケットボール協会が主催する「松本SEEKERS」は、2024年度にチーム名を一新。これまで「松本北部」として活動してきたが、女子チームの再編に伴い、新たなスタートを切った。男女が一緒に活動する松本市内唯一のチームとして、約40人の子どもたちが所属。県U12選手権やU10県フレッシュミニ大会など、各種大会やリーグ戦に出場している。

 指導にあたるのは、全員がJBAのコーチライセンスを取得した8人のコーチ陣。20年以上チームに携わってきた関徳光コーチは「ゴールデンエイジの子どもたちなので、勝利至上主義ではなく、先につながる指導を心掛けている」と語る。小学生に求められる技術レベルが昔より高まっていると捉え、精神論ではなく、細部まで追求した指導で確かな技術と土台づくりを目指す。
 練習での声掛けで重視しているのは「why(なぜ)」という視点だ。「なぜこの練習をする必要があるのか、なぜこういうことが起きたのか。子どもたちに考えさせることを大切にしている」と関コーチ。指示を出す際にも、理由を同時に伝え、共有しているという。


 こうした「考える力」を育む指導は、着実に成果を上げている。小学5年の佐藤央理は「3年生で初めて試合に出たことをきっかけに、家で動画を見て自分の課題を見つけるようになった」と話す。同学年の吉田理乃も「ドリブルでどうやって相手を抜くか、抜くためにはどうしたらいいかを考えてイメージして練習に取り入れている」と、自ら課題克服に取り組んでいる。

 小学1年生から6年生まで幅広い年代が集まるチーム。上級生が下級生に自然と声をかけ、アップや体幹トレーニングをリードする姿も見られる。「バスケットボールがうまいだけではなく、人間的にも成長し、人の先頭に立てる人になってほしい」というコーチたちの願いは、自ら考えて行動する子どもたちの姿に確かに反映されている。
 「松本北部」から名前を変えても、その 理念と実践は脈々と受け継がれ、松本SEEKERSの新たな歴史を紡いでいく。


【女子新キャプテン 吉田理乃さん】
姉がバスケットをしている姿を見てカッコいいと思い、3年生から始めました。クラブに入ったことで、バスケット以外のことも、一つ一つのことを注意深く考えてから取り組めるようになりました。キャプテンとしては、周りに気を配れるようになりたいです。


【男子新キャプテン 佐藤央理くん】
小学1年生の9月にクラブへ入りました。シュートを決めたり、ドリブルで抜けたときに楽しさを感じます。練習前の掃除など、クラブで学んだことを通して、生活面でも自分を律して行動できるようになりました。今までのキャプテンのように、カッコいいキャプテンを目指します。


【コーチ 関徳光さん】
指導では、子どもたちが自分で考えられるような声掛けを大切にしています。また、小学1年生から6年生までと年齢の幅が広いため、バスケットの技術面はもちろん、選手一人ひとりのメンタル面にも寄り添った指導を心掛けています。

体験、入会に関する詳細はQRからご確認ください。

取材・撮影/児玉さつき