高校スポーツ

【松本第一高校 ダンス部】    心を震わせる表現者

大きな鏡を前に、音楽に合わせながら一つひとつの動きを入念にチェックする部員たち。松本第一高校ダンス部の面々は、6月13日に予定するダンス発表会「IMD」に向け、部活動の練習に打ち込んでいる。

 2023年の第18回長野県高校ダンスフェスティバルsmall部門で3位入賞の実績を持つ。前回大会では「閉園後の遊園地」をテーマに据え、息の合ったダンスを披露した。入賞には及ばなかったものの、他校のステージから刺激を受け、今後の活動への意欲を高める貴重な機会となった。
 4月の体験入部期間を終え、6人の新入部員を迎えた現在の部員数は15人。顧問の丸山雄一教諭は生徒たちの自主性を重んじ、「父親のような存在として、生徒たちの活動を見守っている」と語る。スケジュール作成も生徒たちが担うが、「オフが多すぎないか。発表会に間に合うのか」と不安に思うことはあるという。

 「自分から生徒に変更を促すことはない。発表の日が迫ってくる中で、子どもたちが『これでは間に合わない』と気付くまでグッとこらえる」と指導方針を貫く丸山教諭。外部講師もあえて呼ばず、生徒たちに任せるスタイルを通して、自主性の育成を図っている。
 高校から始める部員が多いダンス部では、新入部員へのダンス指導も重要な課題だ。東海林媛由部長は「6月の発表会に間に合わせるために、体験入部期間からアイソレーションなどの基礎練習を行っている」と話す。「通常練習でも、アイソレーションや各ジャンルの基本動作といった基礎トレーニングを重視し、その後に各発表に向けた振り付けの確認をしている」。初心者への指導では「動きで伝えることはできるけれど、それだけでは伝えきれないときもある。その場合は言葉で説明する必要があるけれど、それがなかなか難しい」と悩みも抱える。「ダンスが好きで入部してくれた部員のみんなに、『ダンス部に入部して良かった』と思ってほしい」と前を向き、試行錯誤を繰り返しながら後輩の育成に励んでいる。


 6月のIMDを終えると、9月の文化祭に向けた練習が始まる。部員全員の意見を吸い上げて選曲し、東海林部長が編集を担当。振り付けもカテゴリーごとに生徒自らが考える。
 「ダンスの楽しさは、自分の好きな曲の世界観を表現できること。そして、ダンスを見てくれた人たちに感動を与えられること」と東海林部長。「自分たちも観客も心を震わせるような、最高のステージを届けたい」と熱い想いを胸に、ダンス部15人の心を一つにしながら取り組みは続く。

【部長 東海林媛由 さん】
部長としての活動を通じて、部活動のスケジュールを組む際に先々のことを考える必要性を知れたことや、部活動を円滑に進めるための人との関わり方など、様々なことを学ぶことができ、良い経験になっています。

【顧問 丸山雄一 教諭】
発表会前にアドバイスをすることはありますが、基本的には生徒たちの自主性を尊重しています。失敗を糧にして納得できるステージを作るのはもちろんですが、ダンス部での経験を将来に役立ててほしいと願っています。

取材・撮影/児玉さつき