日が落ちた午後7時、照明に照らされた小学校の体育館に、元気の良い掛け声と弾むボールの音が響き渡る――。長野県松本市を拠点に活動する「松本清水ミニバスケットボール教室」の練習風景だ。過去に2度の全国大会出場を果たし、これまでに2名のBリーガーを輩出してきた。そんな輝かしい実績を持つ名門でありながら、コートに漂うのは、どこか温かく、それでいてきりっとした心地よい緊張感である。

現在、チームには年中から小学校6年生まで34名が所属。清水小や山辺小など、近隣の5つの小学校から集まった子どもたちだ。これだけ多様な年齢と異なる学校のメンバーが一つになれる背景には、指導歴20年以上という金井康雄代表をはじめとする5名のコーチ陣が、長年大切に守り続けてきた明確な育成哲学がある。
チームが何よりも重んじるのは、学校の授業や遊びとは一線を画す「社会体育」としての規律だ。同じ学校の仲間が多くなると、どうしても甘えが生じて雰囲気がルーズになり、メリハリを欠いてしまいがちである。だからこそ、松本清水では低学年であっても「人の話をしっかり聞くこと」や「チームのルールを守ること」を徹底して指導する。集団の中でルールを守るからこそ、周りの仲間と一緒に全力でプレーができる。この当たり前でありながら最も重要なベースを、低学年のうちから繰り返し体に染み込ませていく。

同時に、チームは子どもたちの「自立」を促すアプローチも忘れない。4年生以下を中心としたBチームでは、いきなり週三日の練習を義務付けるようなことはしない。「やるのは本人」という基本スタンスのもと、三年生くらいまでは子ども自身が「今週は〇曜日に行く」と通う目標を自分で決める。この小さな選択の積み重ねが主体性を育み、やがて高学年のAチームに上がった際、そして中学・高校とさらに上のカテゴリーへ進んだ時に、主体的に才能を開花させる確かな土台へと変わっていく。
「学校体育と社会スポーツの違いを意識しつつ、スキルの向上もさることながら『一人は皆のために 皆は一人のために』のチームスポーツの神髄を理解して欲しいと願って指導に当たっています」そう語る金井代表の視線は、ミニバスの枠を超えて子どもたちの未来へと向けられている。上のカテゴリーへ進めば、競争はさらに激しくなる。全員に出場機会があるミニバスとは違い、中学や高校ではコートに立てるのはわずか五人だけだ。そんな厳しい世界で生き残り、人として大きく花開くのは、やはり自分のことを自分でできる自立した選手に他ならない。


バスケットボールは、日々の習慣が実を結ぶ「ハビットスポーツ」だ。自ら考えて動く力を身に付けた子どもたち。特に最高学年の小学6年生は、毎年6月頃から年明けにかけて見違えるほどの急成長を遂げると言う。放たれたボールがスパッとネットを揺らす心地よい音とともに、子どもたちは今日もまた一つ、心と体を強くしていく。勝敗の先にある「生涯の仲間」と「自立」という人生の財産を掴み取るため、今日も自分の意志で力強くボールを追いかけ続けている。

※後列の右から2番目:柳澤尚コーチ 後列の右から1番目:市川洋コーチ
【キャプテン 柴田柊亮 くん】
バスケを始めてから周りをよく見られるようになり、普段の学校生活でも周りに気を配れるようになりました。先輩たちからの想いを受け継いだキャプテンとして、みんなで目標の県大会出場に向かって全力を尽くします。

【代表 金井康雄 さん】
バスケは習慣のスポーツ。自ら考えて動く習慣を大切にしてほしいですね。今がすべてではなく可能性はこれからです。いつも支えてくれる親御さんへの感謝を胸に、最後の試合で感動してもらえる姿を期待しています。

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取材・撮影/児玉さつき
