音楽のリズムに合わせて2本の縄を回す。その中で軽快にステップを刻んだり、アクロバティックな技を繰り出したり。県内屈指の公立進学校・松本深志高校にはダブルダッチ部が存在する。所属するのは1〜2年生26人。「JOKER」の名称で活動し、日々パフォーマンスを磨いている。

ダブルダッチ部の発祥は2000年代初頭にさかのぼる。前身のニュースポーツ同好会から通算すると、現在の2年生が第21代目。同校は他にもユニークな同好会活動や部活動が多く、その一つとして芽吹いたとされる。
部員はそれぞれ高校でダブルダッチを始めた。スピード感のあるステップワークが得意な人、ダンスに長けた人、楽曲編集のスキルが突出している人――。さまざまな個性が集まり、才能を持ち寄りながらパフォーマンスを練り上げる。

「JOKER自体がすごく個性の強いチーム。みんながそれぞれやりたいことに夢中になれる空間だし、互いにアドバイスしながら切磋琢磨できる環境になっている」。そう話すのは樫山実祈部長。自身も中学時代は新体操に打ち込んでおり、高校からダブルダッチを始めた。
ダブルダッチに魅せられて松本深志に入学した部員もいる。副部長の田中一葉。バスケットボールをしていた中学1年生時に同校の文化祭で出合い、「ダブルダッチをやりたくて深志に入った」と明かす。
それだけの魅力はどこにあるのか。パフォーマンスのスタイリッシュさだけでなく、仲間との共同作業も要素の一つだ。上野美結副部長は「誰か一人が欠けてもダメ。みんなで話し合ってデモが完成した時とか、一つの技ができた時の達成感が魅力」と力を込める。

練習は週4回。重要な大会の前にはイギリスの人気オーディション番組にも出場したOBのHAJIME(黒岩基)さんが指導に訪れるなど、先達の力も借りながら力を蓄える。「教えてくれる人は先輩しかいないので、とてもありがたい」と田中副部長は信頼を寄せる。
ターゲットとする大会は年間で主に4つ。そのうち「ダブルダッチ甲子園ITADAKI」と「ダブルダッチ デライト」では思うような結果が出ず、来年3月に行われる「デラジャンプ」と「ダブルダッチ コンテスト」での上位進出を目指す。
「ケガなく楽しく、最後までやり切りたい」と樫山部長。2本の縄であざなわれた絆を強めながら、切磋琢磨の日々は続く。

【部長 樫山実祈 さん】
中学校では新体操をやっていました。入学した時の3年生に同じクラブの先輩がJOKERにいて、楽しそうだったので惹かれました。ダブルダッチは目で見てすぐに失敗がわかるだけに、みんなミスなくできたときの達成感が魅力だと思います。

【副部長 上野美結 さん】
中学3年生の時に文化祭でダブルダッチの発表を見て興味を持ちました。あいさつをすることなどは心がけていますが、「部活!」というよりは楽しんで活動しています。先輩も後輩も関係なく仲が良いですし、珍しいスポーツなので興味を持ってもらえたらうれしいです。

【副部長 田中一葉 さん】
チームワークを大切に、仲間と一緒にやるのが楽しいです。今までの大会ではノーミスを出したことがまだありません。来年3月の大会で優勝することを目標に頑張っているので、悔いが残らないように日々やっていきたいです。

取材・撮影/大枝令
